タンデムとシングル
ガレージポモナの木下です。
これは73年のアメリカ仕様911から取り外したブレーキのマスターシリンダーです。マスターシリンダーとはちょうど注射器のシリンダーような構造になっていて、ブレーキペダルを踏む力でブレーキフルードに液圧を発生させる装置です。これに使われているパッキンが経年変化でダメになってしまい、ブレーキが抜け気味になってしまったため、交換しました。
ちなみに、その下に並べてみたのが同じ頃の日本仕様に使用されていたブレーキマスター。全長は同じですが何やらカタチが違いますね。実はアメリカ仕様は内部のピストンが縦に2つ入っている「タンデムマスター」と呼ばれるもの。一方、日本仕様はピストンは1つのシングルタイプです。
なぜアメリカ仕様だけタンデムになっているかというと、ズバリ安全のため。ピストンが縦に2つ並んでいるということは要はマスターが2つ付いているのと同じ意味。万一、片方から液漏れが生じても、もう片方でブレーキが効くという安全のためのシステムなのです。
これは当時のアメリカの法規がそのようになっていたというのもありますが、わざわざ律儀に作り分けるあたり、いかにポルシェがアメリカ市場を重視しているかがわかるエピソードでもありますね。