プジョー308だけでなく ダンパーの質感をあげたい方必読/ダンパーセッティングの妙
レッドポイントの赤座です。
今回の作業内容は、プジョー308を問わず施工が可能な内容ですので、現在装着中の
ダンパーの質感を上げたい!と思われた方はご相談下さい。
車両はプジョー308の前期モデルのマニュアルミッション 1.6THPです。
ずいぶん前に当社で装着したビルシュタインのB14が装着中です。
先日、別件での入庫中に普段とは異なるシーンにおいての試運転中に
乗り心地の悪さを痛感しまして、お客様に率直な印象を述べることから始まりました。
私の感じたことは、お客様も同様に感じておられた様で、リセッティングをお任せ頂ける事になりました。
現状のダメな点を洗い出し、そこに対しての打開策を考え、実行していくわけですが簡単な作業ではありません。
今回の乗り味の悪化の原因は、ダンパー減衰が抜けているといった分かりやすい状況が有るわけでは無く、もっと奥の方にある原因を掘り下げていくことになります。
実際にSDLテストでの路面粘着率は、いたって良好な結果でした。
特にフロントの接地感は、グラフだけを見ていると、乗り心地が悪そうと言うよりもむしろ良さそうな結果です。
SDLテストには反映されない領域のストロークを煮詰めていきます。そして、現状のダンパー寸法も大切な情報源です。
分解前に測定する事が色々とあります。1G寸法・伸びきり寸法・一輪あたりに掛かる重量(輪重)
伸びきり寸法~1G寸法を計る事で、現在のスプリングレートが割り出せますので
バネが硬いのか・柔らかいのか、が分かってきます。
B14の付属スプリングは、直巻きバネではあるものの、スプリングレートの公表が無い為、考えて割り出す必要があります。
ダンパー及びスプリングの目視点検も必要です。
直巻きバネと、ヘルパースプリングの組み合わせですが、現在の車高を得るためににはこれだけヘルパーを潰さなければならなくなっています。
これではヘルパースプリングと言うよりは、スペーサですね。
ヘルパーやテンダーと呼ばれる補助バネは、賛否両論ですが上手く使うことで足廻りの動き・路面追従性は向上すると思っています。
まず、このヘルパーを機能させる事を考えましょう。
以下のように原因・対策をまとめてみました。
「フロントのヘルパーバネが、ジャッキアップ状態でほぼ圧縮されている」
欠点:伸びストロークの不足により、ストローク感が無く接地感が減る。
街乗りスピードの乗り心地も悪化する。
改善方法:ストローク18mm増やす事で伸びストローク確保。上記欠点は減少します。
しかし高速道路のレーンチェンジではインリフト傾向になるため、アブソーバーで帳尻を合わせます。
そして、最大の決め手となるのがダンパーセッティングです。ダンパーは、知れば知るほど奥の深い世界です。
減衰と一言で言えども、微速・中速・高速 それぞれに伸び側・縮み側が存在します。
どの領域をこうしたいから、ここをこうする、そうなることでここがこうなるから、
次はこの部分をこうする。といった具合に狙い・効果・妥協点を打ち消す策など色々な要素を高バランスで実現していくのです。
ダンパーを測定にかけたところ、以下の欠点が見つかり、そして対策を施します。
「フロントダンパーの減衰がアンマッチ」
ダメだと感じた点:
伸び、圧ともに微速の減衰力が不足しているため、常時ほわんほわんする。
その割に圧側のハイスピードが高く、大きなギャップでドン付き入力が入る。
改善方法:
圧側の微速減衰を倍くらいにアップ。高速側は20%ほど下げ、伸び微速は10%下げて乗り心地をかせぐ。
中速20%下げ、高速は40%上げ
(中速を下げてしなやかさを出しつつ、あまり使わない高速域をドンと上げてインリフトの対策とします)
「リアダンパーの減衰がアンマッチ」
ダメだと感じた点:
伸び、圧ともに微速の減衰力が不足しているため、常時ほわんほわんする。
リアなので乗り心地対策をしているのだと思いますが、
結果として前後共上下に動くようになるため、
スポーツ志向のユーザーさんには不向きだと思います。
改善方法;
圧側の微速減衰は50%ほどアップし車体の安定を狙います。
ハイスピードは少し上げ後ろが沈み込むのを抑制します。
伸びは微速は上げ、ハイスピードは下げて後ろの安定接地を狙います。
と、この様に施工メニューを、車体側イメージと照らし合わせながら決定します。
一発で決まるケースは少ないのですが今回は一発で掴みました。
乗ってみて感じるのが、あらゆるシーンでの乗り心地の改善・かつスポーティな味わい。
決して硬いわけではなく、サスペンションが仕事を上手に行っているからこその結果が出ました。
荒れた路面やギャップをあえてスピードをのせて乗り越えても、身構えること無く吸収し、宙に浮く感じが無い為安心感もすこぶる良いです。
以前は、ギャップの凹凸の吸収に時間を要する動きで有った為、悪い路面が続く際にずっと体が揺さぶられる印象で(ここが最大の苦痛でした)した。
リセッティング後は、そういった不快感は全く拭い去れました。
一般道からハイスピード領域まで広くカバーする質感高いサスペンションに
生まれ変わり、試運転中に思わずにんまりと笑みの出る仕上がりに満足です。
これならきっと、お客様もお喜び頂けるはず。
細かな仕上げを行い、週末を目標に完成させますよ。