こんにちは、Jスクエアです。
今回はR35型 ニッサンGT-RのABS修理を承りました。

正式にはVDC（ビークルダイナミクスコントロール）ユニットといいますが
『ABS』という呼称が一般的に認知されているため、弊社ではABSユニットと呼びます。
ちなみにニッサンやスバルはVDC、BMWはDSC、VWアウディはESPと
各メーカー毎に異なる名称で呼ばれています。

埼玉県からお越しいただいたお客様、
趣味のサーキット走行を楽しまれた後に、ABS、VDC、タイヤ空気圧ランプが
点灯してしまったということでした。
　
　

来店された当初は、警告ランプが点灯していませんでした。
警告灯の点灯には段階があります。
・初期の段階ではABS警告灯が点いたり消えたりする。
・警告灯点灯の時間が長くなる。
・最終的に警告灯が点きっぱなしになる。
今回のように、警告灯が点いたり消えたりするのは、
ABSの不具合ではよく見られるケースです。

「ランプが消えてしまったら診断できないですか？」
とご相談いただくことも多いですが、警告灯が消えていても
多くのクルマでは故障コードがメモリされているので大丈夫です。
　
　

R35 GT-Rの診断には汎用機のオーテル・マキシシスを使用します。

汎用機ではありますが、ディーラーさんで使用されている専用機同様に
故障コードの読み出しから各機能のキャリブレーション（調整）までできる
高機能な診断機です。

運転席足元にある故障診断用のOBDカプラーに診断機を接続します。

C1111　ポンプモーター
上記コードはユニットのオーバーホールが可能です。
　
　

R35 GT-RのABS・VDCユニットはエンジンルームの右側バルクヘッド付近にあります。

ブレーキマスターなどを隠しているメンテナンスリッドを取り外すと
VDCユニット本体が姿を現します。

井口工場長が手にしているのが、取り外したVDCユニットです。
こちらを分解して内部の修理を行っていきます。
　
　

上の写真はユニットを駆動しているモーターのコイルです。
モーターのコイルとブラシを新品に交換します。

制御基板上のコンデンサとトランジスタを交換しました。
いつも簡単に「修理しました」と書いていますが、
ABSの基板は開け方を間違えただけでも
内部を破損して修理不可能になるほどに繊細なものです。

弊社では専用の設備が揃っているので、安全に作業できますが、
よく「自分で修理してみたのですが…」というケースでは
内部を破損していたということがよくあります。
そうなってしまうと弊社でも修理できませんので、
ABSに関しいぇは初めから専門の業者にお任せください。
　
　

修理の完了したVDCユニットを車体に取付け、
ブレーキ圧送機を用いて、システム及び配管内のエア抜きを行います。
　
　

弊社では旧来のフットブレーキでのエア抜きは行わず、
Ate製のブレーキ圧送機を用いています。

その理由としては
・ABSユニット内のエア噛みを完全に取り除ける
・ブレーキマスターシリンダーのピストン破損を防止する
といったメリットがあるからです。

圧送機を使用せず、フットブレーキでブレーキのエア抜きを行っていて
ピストンのゴムを破損したというケースでご相談いただくこともあります。

現在では多くの整備工場さんでブレーキ圧送機は導入されています。
車検時にはブレーキフルードの交換時に、このエア抜き作業を行いますので、
ご心配な方は、圧送機を使用している工場に作業をご依頼ください。

エア抜きが完了したら、診断機を接続して故障コードを消去、
VDCのキャリブレーションを実施します。
・前後Gセンサー
・圧力センサー
VDCを正確に作動させるために必要な各センサーの測定値の誤差を修正すれば、
全ての作業は完了です。

無事にABSも作動するようになり、お客様にもお喜びいただけました。
VDCは通常走行時にも作動していますが、特にサーキットでの走行時には
より活発に作動してドライビングをサポートしています。
今やタイムの短縮には必要なデバイスといえるでしょう。

これからもサーキット走行をお楽しみください。
この度は遠方よりのご来店、ありがとうございました。
　
　

こちらの動画は、弊社で使用している圧送機に関するものです。