MATストラトス ラリーステージのスーパースターが復活 ベースはF430
公開 : 2018.07.27 10:10
驚愕のスタイリングと、ディノのV6エンジンによるサウンドで1970年代のラリーファンを魅了したストラトスが現代によみがえります。25台限定という超レアな1台に試乗する機会を得ました。
もくじ
ー 3度目の正直
ー 難航し続けたストラトスの復活
ー わずか25台の製造を目指すMAT社
ー オリジナル同様、エンジンはフェラーリ製
ー MAT社のノウハウが生かされる
ー 約束された価格以上の希少性
ー 番外編:ラリーを変えたクルマ
ー MATストラトスのスペック
3度目の正直
今回のアイデアは、消えることはないだろう。1970年代を象徴する、スター的な存在のクルマを復活させるための、3回目の試みが動き出している。今回のプロジェクトを推し進める関係者によれば、25台のクルマを生産予定で、1台あたり48万6000ポンド(7095万円)のコストを要し、最初の数台はテストの犠牲になるようだ。
幸運にも、そんなクルマに乗る機会を得た。
まずはこのオリジナル、ランチア・ストラトスにまつわるストーリーを振り返ってみよう。
誰もが気になるであろう、その目を引くスタイリング。エッジの効いたくさび形のボディはグラスファイバー製で、スペースフレーム・シャシーを覆っていた。ランチアが1972年に産み出したラリー・スペシャルは、ヘルメットのバイザーのようなグラスエリアに、極めて短いホイールベースと切り詰められたオーバーハングを持っていた。全てはダート路面を引っ掻き回すため。
ラリーステージの沿道を埋めるラリーファンたちは、彫刻刀の先端のようなノーズを見るや否や走り過ぎ、リア周りに大きなマスを持つ、ランチア製の「クイックシルバー」に魅了された。斜め前から見た形状は特に鋭く感じられた。
夜間の姿も印象的なものだった。一対の丸いテールランプがコーナーの間を優雅に踊るように抜けていく。飛び散る砂利のはじけるような音に覆いかぶさるように、ディノ譲りのV6エンジンの叫びが、夜空に響き渡る。
その音を聞くたびに、ラリーファンは目を大きくし、「ストラトス!」と漆黒の森の中で声を上げた。フォード・エスコートが積む、コスワース製BDAエンジン以上に気持ちを高ぶらせる響きは、フォードのラリー本拠地、ボアハムがどんなに頑張っても叶わないものだった。
これが当時、僕たちを虜にしたストラトスの姿。今もその力は薄れていない。
オリジナル・ストラトスのコレクターを父に持つ、若い自動車デザイナーのクリス・フラバレックも、そんな魅力に取り憑かれたひとり。ストラトスの現代版を作ろうと決めたのは、すでに13年も前の話となる。