バットモービル BMW CSL 169台のキャブレター仕様 M社を象徴するクーペ
公開 : 2019.06.09 11:50 更新 : 2020.12.08 10:40
エレガントなクーペ、E9が発表されてから今年で50年になります。M社の前身となるBMWモータースポーツ社として初めて1971年に登場したCSLは、鮮烈なアピアランスと戦績から、圧倒的な地位を築きました。その中でも特に貴重なキャブレターモデルを振り返ります。
もくじ
ー わずか169台が作られたCSLのキャブレター・モデル
ー アルピナやシュニッツアーによるツーリングカー参戦
ー 181kgダイエットした1165kgのCSL
ー 7J幅のアルピナ製ホイールにオーバーフェンダー
ー 英国限定で存在した500台のCSLi
ー 走行距離6万4000kmのキャブレターCSLを発見
ー BMWモータースポーツの起源
ー BMW 3.0CSLキャブレター(1971年〜1972年)のスペック
わずか169台が作られたCSLのキャブレター・モデル
今回はBMW製のクーペ、CSL誕生の物語を振り返ってみよう。輝かしい1970年代のBMWが生んだモータースポーツの伝説を、たった1モデルで築き上げたといっても過言ではない。通称「バットモービル」と呼ばれていたこともご存知な読者もいるはず。映画バットマンに登場するバットモービルのような、派手なフロントスカートやリアウィングからそう呼ばれた。
当時のBMWとしては最速で希少価値も極めて高く、ビジュアル的にも強くひとを惹き付ける力あった。そんなわれわれを興奮させてくれたCSLだが、誕生前後のことはあまり良く知られていない。特に、1971年の5月から1972年の6月にかけて製造された、169台のキャブレター・エンジンモデルのことは。
キャブレターモデルはすべてが左ハンドル車で、英国では正規で販売されることはなかった。英国の輸入代理店は、BMWのラグジュアリーなイメージに反して、贅肉を剥ぎ取られたようなクルマにあまり興味を示さなかったのだろう。特に当時は、単に営業許可を得ていただけで、BMWの製造部門との距離も遠かったのだ。そんなクルマが、後に大きな注目を集めることとなる。
そもそもE9クーペは豪華なボディトリムに、さほど強固とはいえないボディシェルを持ち、様々な点でレーシングカー向きではなかった。1965年に2000CSとして誕生したクルマが、進化を経て後にヨーロッパ・ツーリングカー選手権で5度も優勝を果たすとは、誰も想像しなかっただろう。しかも、E9型がE24型の6シリーズとしてモデルチェンジをした後でも、さらに3年間に渡って高い競争力を誇っていた。