アストンの栄光 DBSスーパーレッジェーラで行く追憶の旅 舞台はグッドウッド
公開 : 2019.06.22 11:50
1959年はアストン マーティンのレース活動における最高の年とされています。この年、ル・マンを制したアストンは、グッドウッドでの劇的な勝利によって、世界スポーツカー選手権のタイトルを獲得したのです。稀代のGT、DBSスーパーレッジェーラで追憶の旅に出ました。
もくじ
ー 別世界への誘い 目指すはグッドウッド
ー ニュルブルクリンク2連覇 執念のル・マン初勝利
ー 予定外の参戦 栄光の1959年
ー 60年の隔たり 実力は互角
ー 無限の想像 偉大なGT
ー 番外編:1959年ニュルブルクリンク1000km モスの猛追
別世界への誘い 目指すはグッドウッド
はっきりとした意識のまま、完全なる別世界へと旅立ちたいなら、アストン マーティンDBSスーパーレッジェーラほど、この目的に相応しい存在はいないだろう。これは、直接的な表現でもあり、比喩でもある。
現実世界においては、DBSスーパーレッジェーラに相応しい舞台とは郊外であり、誰も知らないような場所へと向かうことで、このクルマに与えられた驚くべき自由を楽しむことが出来るのだ。
そして、例え邪魔が入ったとしても(725psものパワーを誇るこのクルマでは信じられないかも知れないが、実際に起こり得るのだ)、目的地を変更するか、もう一度引き返してみても良い。
どんなクルマでも、こうした運転を数時間も続ければ、驚くほど遠くまで辿り着くとともに、驚くほどのドライビングの楽しみを味わうことができるだろう。
ノーマルのDBSであれば、ドライバーには素晴らしい時間が与えられることになる。このクルマは偉大なるアストンの1台として、短いストレートを全開で駆け抜けることも、高速コーナーを滑らかに走り抜けることも自由自在であり、素晴らしいルックスとパフォーマンス、ハンドリングといった、数多くの魅力を備えている。
だが、さらなる別世界というものがあり、DBSスーパーレッジェーラは見事にそうした世界へとドライバーを誘う。モーターウェイを長距離移動している間、ドライバーの耳に届く甘美なV12サウンドは、決してありきたりな音源では味わえないものであり、そのサウンドに魅了されたものは、ある種の陶酔状態へと誘い込まれる。
そして、M4号線やA34、M27といったモーターウェイは、決して夢の道というわけではないが、DBSスーパーレッジェーラに乗って、時空を超える旅へ出ようというのであれば、こうした道にはそれなりの恩恵があり、いま、DBSスーパーレッジェーラがその美しいノーズを向けているのが、ウエスト・サセックスにあるレーストラックであることを考えれば、わたしの意識が60年前にタイムスリップするのも当然かも知れない。
その目的地とはグッドウッドであり、1948年、かつての英国空軍基地がサーキットへと姿を変えて以降、この場所では多くの伝説が生まれている。だが、そのなかでも特別なものが、1959年のアストン マーティンによるツーリスト・トロフィーへの参戦であり、ここでの勝利によって、彼らはクローズドホイールで争われるタイトルでは、世界最高の栄誉とされた、世界スポーツカー選手権のタイトルを手中に収めている。