2年に1度のビンテージカーの祭典 フランス「ビンテージ・モンレリ」レポート 前編
公開 : 2019.08.10 07:50 更新 : 2021.02.02 12:32
2年に1度、第2次大戦以前に製造された様々クルマが、フランスのリナ・モンレリへ集います。ミュージアム級のビンテージカーが名門オーバル・バンクコースを駆け抜ける、世界のエンスージャストにとっての一大イベントを取材しました。
戦前のビンテージカーが一同に集う
第2次大戦以前に製造されたクルマやバイクを愛するエンスージャストにとって、2年に1度、5月のフランスで開催される「ビンテージ・モンレリ」ほど楽しみなイベントはないかもしれない。大きく傾斜したバンクカーブが特徴の、パリの南部にある伝説的なオーバルコース「リナ・モンレリ」を会場に開かれる。巨大なプロペラで進むレイヤから、歴史的なグランプリマシンまで、様々なクラシックカーが一同に集う。締め切りの1カ月以上前には定員超えとなり、出走の申込みが終了する人気イベントだ。
基本的にデモンストレーション走行のみで、サーキット走行のセッションを200ユーロ(2万5000円)程度で楽しむことができる。ジュリアン・マジュブやリチャード・ピルキントン、ダンカン・ピッタウェイ、クリス・マンなど有名なレーシングドライバーも参加。順位を争うコンペティションではないものの、偉大な歴史遺産がサーキットを駆け抜ける勇姿を見ることができる、またとない機会といえる。
「世界的に見ても最も素晴らしいビンテージカーのイベントです。施設は老朽化し、サーキット自体も痛みが酷く、砂や土が路面に乗っています。しかし、古いバイクやブガッティが混在する中に紛れるなんて、最高の体験です」 とアメリカ・サンフランシスコから参加した、オリジナル・オートバイの製造などを手掛けるザ・ビンテージェントのパウル・オルレアンは話す。
金曜日の夜には大雨が降り、会期中もにわか雨に見舞われたものの、今回も基本的には晴天に恵まれた。ビンテージマシンはタイヤが巻き上げた砂や土で汚れてしまったが、むしろいい味を醸し出すことになった。
2019年はアルファ・ロメオとテローがテーマ
毎回、特別なテーマを設定する「ビンテージ・モンレリ」だが、2019年はアルファ・ロメオとフランスのオートバイメーカー、テローをフィーチャー。イタリア出身のエンジニア、ヴィットリオ・ヤーノが手掛けた、6気筒と8気筒のレーシングマシンが華々しい1グループを形成した。中にはアルファ・モンツアも何台か含まれていた。
デモ走行だけということもあり、比較的気軽に参加できることも魅力。英国からも多くの参加者がいる。中でも、サセックスから来たルパート・クリーブがドライブするルドルフ・カラツィオラ・スタイルのモンツアが、奥さんを助手席に乗せてバンクコーナーを登っていく姿は感動的ですらあった。
同じく英国から参加のポール・グレゴリーが所有するのは、素晴らしいツーリング・ボディのアルファ・ロメオ8Cスパイダー。かなり強いにわか雨の中でも、フードを占めることなくコースを周回していた。「オープンで思い切り走らせる機会を得られて最高です。シケイン手前のブレーキングは難しいですね。勢いよく追い越していった、グランプリマシンのティーポ308のエグゾーストノートを聞きながら走る体験は素晴らしいものでした」 と初めて参加したグレゴリーは振り返る。
参加したアルファ・ロメオの中で最も古いクルマは、マンの1924年式RLタルガ・フローリオ。1950年代に彼の父が購入したそうだ。エンジニアのアントニオ・ラーゴがアゴスティーノ・ランフランキのために設計したクルマで、ブルックランズのサーキットでも活躍した。ロングギアを持ち、ツーリングカーとしても優れている。1973年にマンはシシリア島からロンドンまで、パリを経由してドライブしたそうだ。