日本郵便/ヤマト運輸 EVの配送トラック導入のワケ 商用車なら「もと取れる」か
公開 : 2019.11.21 17:10 更新 : 2021.10.09 23:53
日本郵便に続き、ヤマト運輸もです。配送用トラックをEVに切り替えます。商用車ならば「もとが取れる」という勝算=出口戦略があるようです。配送特化型として、研究しつくされたディテールも必見です。
日本郵便に続き、ヤマト運輸もEV導入へ
「なぜ、このタイミングで一気にEV導入なのか?」
日本の郵便事業や宅配事業でEV導入が相次いで決まった。
まず、日本郵便が11月13日、「2020年度末までに郵便物や荷物の配送用として1200台のEVを導入する」と発表した。
車両は、三菱自動車のミニキャブ・ミーブ・バン。導入するエリアは、東京などの大都市圏を中心として、まずは2019年度中に400台、翌2020年度には800台を追加して合計1200台とする計画だ。
その結果、2020年度末までに郵便物と荷物を配送する軽四輪自動車のうち、ミニキャブ・ミーブ・バンが全体の約3割を占めることになる。
そうした日本郵便の発表の6日後、11月19日に今後はヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸が国内配送用にEVを導入すると発表したのだ。
ヤマト運輸の場合、使用するEVはドイツポストDHLグループ傘下のストリートスクーターと共同開発した。
導入する台数は初期段階で500台とし、一都三県(東京/神奈川/千葉/埼玉)に配備する。その後にも導入台数を全国レベルで段階的に増やし、いまから11年後の2030年までにはヤマト運輸が所有する小型集配車両の約半数にあたる約5000台をEV化する計画だ。
それにしても、物流大手である日本郵便とヤマト運輸がなぜこのタイミングで日本での集配用EV導入に踏み切ったのだろうか?
日本での乗用EV需要は当面伸びない
まず、EVの全体需要についてみると、2018年の実績で世界全体で約121万台。このうちの約6割を中国が占める。
これは2019年から始まったEVなど電動車に対する、事実上の販売台数規制へ対応したためだ。
中国で新エネルギー車(NEV)と呼ばれるもので、その主体がEVとなる。こうしたEVに対する厳しい姿勢を国として示しているのは、世界で中国だけだ。
中国に次ぎ、EV需要での世界第二位のシェアを持つアメリカでも、カリフォルニア州での環境車対策であるゼロエミッション車(ZEV)への対応が、アメリカ全体でのEV需要を支えている。
ここにテスラを筆頭とするプレミアムEVの需要が加わっているかたちだ。
そして日本だが、EV世界市場では2%程度に止まっている状況だ。2010年に日産「リーフ」と三菱「i-MiEV」が発売されたことで、世界の注目を集めたが、その後はEV量産車が増えず、EV販売で後発だった中国に抜かれて、その差は一気に拡大してしまった。
その上で、複数の日系自動車メーカーの幹部は「日本では乗用EVの需要は当面伸びない」と明言している。
充電インフラや航続距離など、ガソリン車に比べて不利な状況と言われてきた要因が改善に向かっているのだが、それだけではEVが一般に広まる可能性は低いとみている。