991型の有終の美 ポルシェ911スピードスター MTでNAの最後の911なのか

公開 : 2019.11.27 09:50

毛糸の帽子をかぶり、ヒーターを全開にして、オープン前提の911 GT3を晩秋の英国の道で走らせました。ポルシェ911として、最後のマニュアルと自然吸気エンジンとの組み合わせとも考えられる、至高の1台を英国で確かめます。

911 GT3がベースのスピードスター

text:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

991世代のポルシェ911の最後を飾る、特別な限定モデル。人気バンドのベスト盤とでもいえようか。優れたGTモデルの何台かから、もっとも上質なコンポーネントをリミックス。1台のスペシャル・パッケージとして仕上げている。スピードスターとして風に髪をなびかせて走る、特別なスリルというオプショントラック付き。

すでに2019年の初めに、オープンカーに最適な陽光の中で一度試乗している。とても素晴らしい体験で、文句なしの満点を与えた。今回は晩秋の11月の英国で確かめる番。イングランドの北東部ではすでに冬。これ以上にチャレンジングな状況は中々ない。

ポルシェ911スピードスター
ポルシェ911スピードスター

まずはスピードスターの概略から。この名を名乗るのは、ポルシェとしては5台目、911としては4台目となる。

その起源は1954年に登場した、価格を抑えたポルシェ356スピードスターだった。今では愛好家の間で21万2000ポンド(2968万円)はくだらない、高価なクルマになっている。もちろん、最も特別なポルシェでもある。

その後登場した911スピードスターは、Gシリーズと964、997型。いずれもフロントガラスの高さを抑え、リアシートを覆うバブルカバーの付いた、変更を加えたカレラだった。だが最新のスピードスターは911 GT3をベースにしている。

ボディはカレラ4SカブリオレとGT3を融合させ、フロントフェンダーとボンネットは911R由来のカーボンファイバー製。フードカバーは同じくカーボンの専用品。リアバンパーはGT3のものだが、スポイラーやエアインテークなどはスピードスター専用のもの。

これ以上にないアナログの味わい

機械的な部分は基本的にはGT3。4.0L水平対向6気筒の自然吸気エンジンが、リアタイヤの後ろにぶら下がる。ガソリン微粒子捕集フィルター(GPF)を搭載し、環境規制にも対応。若干の改良で10psを上乗せし、最高出力は510psに増強。やや増えた車重を相殺してくれる。

後輪へパワーを伝えるトランスミッションは、911Rでも選べた6速MTのみとなる。サスペンションは基本的に不変だが、一般道も視野に入ってくるクルマだけにダンパーはわずかに柔らかくなった。素晴らしい4輪操舵システムとカーボンセラミック・ブレーキは標準装備となる。

ポルシェ911スピードスター
ポルシェ911スピードスター

それでは走り出してみよう。なにしろ、スピードスターは圧倒的に素晴らしい。気温は0度にまで低下し雪が薄く路面を覆っていたが、光り輝いていた。北部のペナイン山脈は、小雨が降り続いていた。だとしても、スピードスターと過ごした時間は特別なものだった。

ターボが発生する即時的な太いトルクとツインクラッチATのご時世にあって、自然吸気のフラット6に、6速MTの組み合わせ。これ以上にないアナログの味わいだ。

マクラーレン600LTスパイダーフェラーリ488スパイダーほどのスピードはない。だがスピードスターは完璧に正確で、アクセル操作にピタリと反応する。6250rpmを超えるまで最大トルクが得られないとしても、低回転域から十二分にトルクフル。

エンジンは9000rpm目がけて唸り、吠える。聞き惚れるあまり何度もレッドゾーン目がけてエンジンを回してしまう。程よい重さのクラッチペダルを踏み込み、緻密なゲートに沿って、短く無駄のないシフトノブを上下にスライドさせる。

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