【トヨタが街をつくる】なぜ富士山麓に未来の街「WovenCity」2021年着工を決断した?
公開 : 2020.01.07 10:55 更新 : 2021.10.09 23:55
トヨタは未来型都市「WovenCity(ウーブン・シティ)」を2021年に着工すると発表。いわゆる「スマートシティ」です。人とクルマ、そして人と社会(コミュニティ)が通信でつながることになっています。
リアルなスマートシティを独自建設
トヨタはアメリカ現地時間の1月6日、世界最大級のIT・家電見本市CES(ネバダ州ラスベガス)で未来型都市「WovenCity(ウーブン・シティ)」を2021年に着工すると発表した。
場所は、トヨタの先進開発拠点である東富士研究所(静岡県裾野市)に隣接する広大な土地。設計はデンマークの著名建築家であるビャルケ・インゲルスが担う。
総工費については未公開だが、ラスベガスでの発表内容を見ると、数千億円規模の巨大プロジェクトという印象だ。
住居用の大型マンション、ショッピングセンター、公園施設があり、その中を自動運転車「eパレット」が通行。また、街の地下は物流用の自動運転システムが稼働する仕組みだ。
こうした先進的な街づくりについては「スマートシティ」と呼ばれることがある。自動運転、EV、そしてデータ通信によるコネクテッドによって豊かな生活を実現するという考え方だ。
トヨタ本社が配布した日本語資料にも「コネクティッド(コネクテッド)・シティ」プロジェクトとある。
自動車産業界ではこれまで、通信というとクルマとクルマ、またはクルマとインフラがつながることを示してきた。
今回、トヨタの「WovenCity」では、人とクルマ、そして人と社会(コミュニティ)が通信でつながる。
それにしても、トヨタはなぜこのタイミングで未来の街づくりを決断したのだろうか?
CASEは社会実装ステージへ
ラスベガスの会見に登壇した、トヨタの豊田章男社長は「WovenCityによって、CASEを見える化する」という説明をした。
CASEとは、コネクテッド、自動運転、シェアリングなどの新サービス、そして電動化を指す。
ドイツのダイムラーが次世代技術戦略向けのマーケティング用語として使い、それがメディアを通じて一般名詞化した。
トヨタはこれまで、CASEに対する技術開発を積極的に行ってきた。
本社のカンパニー制の中で、先進技術カンパニーやコネクテッドカンパニーなどが個別の技術開発を行うと同時に、先進的なソフトウエア開発についてはTRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスド・デベロップメント:東京日本橋)が担当する。
2019年12月には、TRI-AD社内がメディアに公開され、トヨタの次世代技術開発の方向性について関係者から詳しい説明があった。
こうしたトヨタ社内組織や関連企業で開発された、量産を目指す技術や商品を実際の生活の中で使うために考案されたのが「WovenCity」なのだ。
トヨタでは、アイディアや技術をプロトタイプなどによって具体的に表現することを「見える化」と呼ぶが、「WovenCity」はまさに、トヨタが目指す「すべての人にモビリティを」という理想像の見える化だ。