【偉業と思えるほど高い完成度】ACシュニッツァー ACS5 BMW M5ベースの720ps
公開 : 2020.01.13 09:50
スーパーカークラスの最高出力だけではない内容を備えた、BMW M5ベースのACシュニッツァー ACS5スポーツ。充分に速いM5コンペティションを更に磨き込んだスーパーサルーンを、ドイツで評価しました。
もくじ
ースーパーカー並に目立つACS5
ードライバーの好みで選べるメニュー
ーKW製サスによる歯切れの良いコーナリング
ー大きなボディが内包する圧倒的な能力
ー偉業と思えるほど高いACS5の完成度
ーACシュニッツァー ACS5スポーツのスペック
スーパーカー並に目立つACS5
ACシュニッツァー製のモデルのステアリングを握るドライバーは、自分がどんなクルマに乗っているのか、よく理解しているはず。その極みにあるACS5なら、特に。
すでに充分な性能を誇るBMW M5コンペティションをベースに、機能重視のカーボンファイバー製のボディキットを追加。リアのディフューザーにはF-1マシンのレインライトのような、赤いランプ灯る。4本出しのキャノン風スポーツ・エグゾーストとともに、これ見よがしにカーボンファイバーで縁取られている。
今回の試乗車の場合、ACシュニッツァー社のカスタム・サスペンションはサーキット設定になっていたから、かなり野心的なネガティブ・キャンバーが付いている。高速道路を走っていれば、ミドシップのスーパーカー並に目立つこと請け合いだ。
だがACS5は、アメリカのセマショーに出展されるようなカスタムカーとは異なる。以前ご紹介した、M2コンペティションをベースとするACS2の試乗記をお読みいただいたのなら、ACシュニッツァー社のモータースポーツでの歴史や、チューニング・アプローチはおわかりかと思う。
エンジンのコントロールユニットは、BMW製ソフトウエアを上書き。更なるパワーとトルクを引き出している。ニュルブルクリンクで鍛えたKW社製のサスペンションを装備し、薄いサイドウォールが残るだけの、大径ホイールを履く。
ACシュニッツァー社のマシン開発はとても丁寧。アフターマーケット的なカスタムマシンに見えても、1987年以来拠点としているアーヘンまで出張して、試乗する価値は充分にある。
ドライバーの好みで選べるメニュー
例によって、ACシュニッツァーのクルマは、ドライバーの好みに応じて様々な装備を選択できる。M5コンペティションなら、90ポンド(1万2000円)でバンパー・プロテクションを追加できるし、3万500ポンド(433万円)を投じて、今回のように完全なACS5スポーツに仕立てることもできる。
英国では、中東部のキングズ・リンにあるロシターズ社へ行けば、すべてのメニューが手に入る。カスタム内容には、3年間の保証も付いてくる。
フル装備のACS5なら、通常のM5コンペティションと見間違えることはないはず。他のシュニッツァー製モデルと同様に、カーボンセラミック・ブレーキや主要なボディパネル、アクティブMディファレンシャルなどは、標準のままだとしても。
ACシュニッツァー ACS5スポーツのルックスは、眺めているだけでも楽しい。だが720psのエグゼクティブ・サルーンがどんな走りなのか、想像を上書きするほどではなかった。
これはACシュニッツァー社のチューニング不足というより、オリジナルモデルが持つ破格の性能にある。599psを生み出す標準のM5ですら、湿った路面でも0-96km/h加速は3.3秒。スーパーカー並の鋭さだった。
さらに624psのM5コンペティションが登場。もちろん、さらに高速。昨年メルセデスAMG GT 63 4ドアクーペと、ポルシェ・パナメーラS Eハイブリッドとのグループテストを行ったが、M5コンペティションと並べると、まるでエンジンの気筒数が少ないかのようだった。