【歴史の1ページ】ベントレー、60年間なぜ同じエンジンを作り続けたのか? 生き残ったワケ

公開 : 2020.01.24 16:50  更新 : 2021.10.09 23:54

ベントレーが、あえて「6 3/4リッター」と表示するV型8気筒6752ccエンジンが終焉を迎えます。なぜベントレーは60年間も同じエンジンを作り続けたのか。60年を経て、終了するワケは? 試乗で探ります。

「6 3/4リッター」に込めた想い

text:Kenji Momota(桃田健史)

あえて「6 3/4(シックス・アンド・スリークォーター)リッター」と表示することが、ベントレーの誇りである。

V型8気筒、総排気量が6752cc。ボア×ストロークは104.0mm×99.0mmで、圧縮比は8.9:1。ツインターボで過給し、ミュルザンヌ・スピードの搭載ユニットは最高出力は537ps、最大トルクは112.2kg-m。

ベントレーの6 3/4(シックス・アンド・スリークォーター)リッター・ユニット。
ベントレーの6 3/4(シックス・アンド・スリークォーター)リッター・ユニット。

数値だけみれば、近年のプレミアムブランド系のV8ユニットとしては、目新しいことはない。

だが、このエンジンが基本的に60年間にも渡り、量産車向けに製造され続けてきたことには心底驚かされる。

ここでいう60年間の原点とは、1959年にロールス・ロイス/ベントレーとして量産されたLシリーズを指す。

両ブランドへの搭載目的に応じて、排気量が拡大され、「6 3/4リッター」が登場するのは70年代に入ってからだ。

80年代以降、電子制御とトランスミッションの技術革新によって、それぞれの時代の「6 3/4リッター」として継承されてきた。

そんなベントレー伝統の一品である「6 3/4リッター」がついに、幕を下ろすことになった。

ベントレーモーターズ(本社:英チェシャー州クルー)は2020年1月14日、現行モデルラインアップで唯一、「6 3/4リッター」を搭載するミュルザンヌを2020年春に生産を終えると発表したのだ。

ミュルザンヌとして、つまり「6 3/4リッター」として、30台限定車のミュルザンヌ6.75 byマリナーがファイナルエディションとなる。

「6 3/4リッター」愛され続けてきた理由

現行のベントレー・ミュルザンヌは2016年3月、スイス・ジュネーブショーで世界初公開された。

筆者(桃田健史)も記者発表の現場におり、エクステンデッドホイールベース、スピード、そしてリムジンの各モデルについて、ベントレー関係者から詳しく話を聞いた。

都内で乗ってみて、まず感じるのは、ジェントルな優しさだ。V8といえば、アメリカンV8のようなトルキーというイメージが強い。
都内で乗ってみて、まず感じるのは、ジェントルな優しさだ。V8といえば、アメリカンV8のようなトルキーというイメージが強い。

あれから約4年、改めてミュルザンヌをじっくり味わうことで「なぜ、「6 3/4リッター」が長年に渡り愛され続けてきたのか?」を考えてみた。

ベントレーモーターズジャパンが用意してくれた、ミュルザンヌ・スピードを都内で乗った。

まず感じるのは、ジェントルな優しさだ。V8といえば、アメリカンV8のようなトルキーというイメージが強い。または、メルセデスAMGBMW Mのように中回転域からトルクとパワーがギュッと凝縮する。

「6 3/4リッター」は、そのいずれでもなく、力強さや伸びやかさがあっても、いつも優しさがある。抽象的な表現で恐縮だが、これが筆者の本心だ。

この優しさで、停止状態から100km/hまでの加速は4.9秒。最高速度は305km/hに達する。

こうした優しさは、古き良き時代での基本設計、その設計思想をしっかり受け継いできたクラフトマンシップの成せる業だと思う。

記事に関わった人々

  • 桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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