【走りは、ベテランの味】グランエース試乗 価格/サイズ/内装/アルファードとの違いを評価

公開 : 2020.02.02 19:20  更新 : 2021.12.28 00:08

トヨタ・グランエースに試乗。サイズのわりに、取りまわしは良好。6人乗り、8人乗りを検証します。アル/ヴェルに対する優位点とは?

どんなクルマ?

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
photo:Keisuke Maeda(前田恵介)

プロモーションビデオではコンサート会場に向かうジャズカルテットの姿が映し出される。楽器は別送か? というのはご愛敬だが、最後までドライバーや前席は映らない。東京モーターショーに参考展示された時からVIP送迎車と思っていたが、まったく以てその通りのPVである。

1BOX型の大きな車体(全長×全幅×全高:5300×1970×1990mm)からすれば、パッケージングの特徴はビッグキャビン。余裕の空間をゆったりと使った「贅」がセールスポイント。

8人乗りとなるグランエースG
8人乗りとなるグランエースG

基本線ではそんな感じなのだが、スペース効率を追求したモデルではない。

全長はハイエースのスーパーロングに迫る5.3m。全幅、全高は2m近い。スタイルは絞り込みの少ないボックスデザインであり、ミニバン最上位のアル&ヴェル(アルファード/ヴェルファイア)より文字通り一回り大きい。

数字で見る内装

しかし、室内長はアル&ヴェルより約10cm長いだけ。室内幅はプラス15cmだが、室内高はマイナス11cm。キャビン容量をして圧倒的に広いとは言い難いのだ(プレミアムの室内長/幅/高:3290/1735/1290mm)。

スペース効率が意外と悪いのは車体設計によるもの。駆動方式はFR。エンジンはボンネット内に置かれている。

6人乗りとなるグランエース・プレミアムのエグゼクティブ・パワーシート(電動オットマンを展開)
6人乗りとなるグランエース・プレミアムのエグゼクティブ・パワーシート(電動オットマンを展開)

キャブオーバーレイアウトのハイエースと比較すれば一目瞭然だが、ボンネット長は丸々キャビン長から差し引かれる。

ストレートラダー状にしたフロア骨格とリアリジッドアクスル、大径タイヤなどもスペース効率面ではハンデ。パワートレインはハイエースにも採用されている2.8Lディーゼルと6速AT。これもけっこう嵩張る。

だから車体寸法も大きくなってしまったとも言えるのだが、プロ用途向けのタフな設計と「おもてなし」の高次元での両立を図った結果でもあるのだろう。

ふつうに走れば「ベテランの味」

果たして運転すべきか?。

PVに倣えば運転は運転手さんに任せて、2nd/3rdシートで寛ぐのがグランエースの楽しみ方なのだが、アル&ヴェルからの乗り換えを検討するユーザーなら、やはり視点はドライバーだろう。

グランエースのエンジンは2.8Lディーゼルと6速ATの組み合わせ(写真はプレミアム)
グランエースのエンジンは2.8Lディーゼルと6速ATの組み合わせ(写真はプレミアム)

意外と悪くない。というか個人的にはけっこう好きなタイプ。誇張ではなく走り出した瞬間に開発意図が分かる。

他人を乗せて走る時はちょっとした挙動にも気を使う。もたつかず穏やかに走る。唐突な走り出しを抑えて加速度上昇を一定に。前後の揺れ返しなど以ての外。グワッとダッシュが利いた発進など、同乗者にすれば不快以外の何物でもないだろう。

グランエースは多少ラフなアクセルワークでも穏やかに走り出す。走行中の加減速も同様で、変速時も含めて急激な加速度変化が抑制されている。

操舵に対する反応も同様だ。ヨーの動きや横Gの変化はとても滑らかであり、後輪を軸にゆったりと回り込むようなコーナリング感覚を維持する。これも揺り返しが極めて少ない。

これが初期応答の鋭いタイプなら揺り返しを抑えるために補正操舵を行うのだが、グランエースには不要。ふつうに運転していればベテランショーファーのような走りになる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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