【市場は変わるか?】オールシーズン・タイヤの伸びしろ 10%のドライバーを振り向かせるには
公開 : 2020.02.22 22:15 更新 : 2021.10.11 13:56
ヨーロッパでは、オールシーズン・タイヤの市場構成比が10%に。日本メーカー4社も本格参戦。この国には根付くのでしょうか。
2年連続の暖冬
暖冬の影響でスタッドレス・タイヤの売上が伸び悩んだこの冬。日本のタイヤメーカーが、オールシーズン銘柄の市場に本格参戦を始めて最初の冬とも重なった。
住友ゴムは「ダンロップ・オールシーズン・マックスAS1」、横浜ゴムは「ブルーアース4S AW21」を投入。前者は21サイズ(13~18インチ)、後者は19サイズ(14~19インチ)を用意する。
ブリヂストンも、ファイアストン・ブランドの「ウェザーグリップ」を店頭に並べている。
TOYO TIRESは、SUV向けに絞った「セルシアス」を6サイズ(15~17インチ)発売。仏ミシュランは「クロスクライメート・シリーズ」を14~20インチまで送り込んでおり、発売予定のものを含めるとカタログ上は70サイズを超える。
日本のオールシーズン・タイヤ市場に、いち早く戦略的に製品を投入してきたのは、米グッドイヤーの日本法人だ。
ライバル社の参戦にさぞかし肝を冷やしているかと思ったのだが、そうでもない様子である。
グッドイヤーの調べでは、冬季の道路環境が日本に近いヨーロッパにおいて、オールシーズン・タイヤの市場構成比はおよそ10%(2019年)。
対する日本市場はどうか? オールシーズンを履くクルマの割合は、まだ「100台走っていたら1台いるかいないかくらい(同社幹部)」という。
わずか数%に過ぎない。日本は、これから成長期を迎えるマーケットなのである。
危機感よりも、好機
日本グッドイヤーの金原雄次郎 社長は、他社の参入について「市場が大きくなっていくという意味で、われわれにとってもチャンス。歓迎すべきこと」と、報道陣を集めた懇親会で話している。
「欧州は100台のうち約10台がオールシーズンを履いている」
「日本市場で今後7、8%まで増えることはありえる。ただ、それがどれくらいのスピードで起きるかはなんとも言えない。欧州は(10%まで増えるのに)30年くらい掛かっているが、そこまでは掛からないと思う」
危機感というよりも、流れをうまく掴みたいという話しぶりだった。
夏・冬の履き替えが不要、外したタイヤの保管スペースが不要。こうしたメリットを考えれば、非降雪エリアを中心に、ユーザーが増える伸びしろは少なくない。
目下の課題は、オールシーズン・タイヤという新たな選択肢が、一般的なドライバーに浸透していない現状を好転させること。他社が参入することで、第3のタイヤとして市場自体が広がれば、それだけチャンスが増えるわけだ。
世の中の視線がこのカテゴリーに向けば、グッドイヤーには強みがある。
第1に、すでに日本市場で展開しているオールシーズン・タイヤが58サイズあるということ。
同社には、乗用車向けの「ベクター4シーズンズ・ハイブリッド」と、SUV用の「アシュアランス・ウェザーレディ」が存在し、前者は45サイズ(13~18インチ)、後者は13サイズ(16~20インチ)を数える。まだまだサイズが少ない日本メーカーの倍以上の品揃えである。
また、軽自動車向けとなる13インチについては、155/65R13~155/80R13まで5種類が用意され、後発メーカーに大きく差を付けている。