【グッドウッド雪上版?】GPアイスレース あまりにも見事な非現実世界
公開 : 2020.03.22 18:50 更新 : 2020.03.22 20:25
オーストリアはツェル・アム・ゼーの飛行場を舞台に行われているGPアイスレースというイベントをご存知でしょうか? グッドウッドの雪上版とも言えるこのイベントには、スキージョリングという一風変わったスポーツとともに、古今東西の名車が集まっています。
狂気の世界
ほとんど無音のまま走行するフォーミュラEマシンもすでに見慣れた存在だが、ダニエル・アプトがステアリングを握るアウディeトロンFE06が疾走する姿はとても現実のものとは思えなかった。
このシングルシーターが走行しているのはサーキットではなく、凍結した飛行場にある雪で覆われたコースであり、このマシンが履いているのはスタッドが打ち込まれたアイスタイヤなのだ。
さらに、リアのディフューザーからは牽引ロープが延び、その先にはスキーヤーが必死でしがみついている。
だが、これがこの氷のサーキットで目にすることの出来る、もっとも非現実的な光景というわけではない。
視線を転じれば、2012年のダカールラリーを制したミニ・オール4レーシングが氷の上を滑るように走行している。
ポルシェ・タイカンとともにコースを周回するのは歴史的価値を誇るポルシェ911であり、なぜかそのルーフにはサーフボードが積まれている。
さらには、軽くモディファイされたベントレー・コンチネンタルGTが練習走行を行っている。
そして、ハンス=ヨアヒム・スタックが、かつて自らがF1デビューを果たしたマシンを復活させ、6つ(そう6輪だ)のスタッド付きタイヤを組み合わせている。
そう、これが狂気のGPアイスレースの世界だ。
スキージョリング?
GPアイスレースの名を耳にするのは初めてかも知れないが、開始からわずか2年でモータースポーツのカレンダーにその名を刻もうとしているこのイベントこそ、まさに雪山で行うスピードの祭典とでも呼ぶべきものだ。
グッドウッドと同じく、実はこのイベントも長きに渡るモータースポーツの歴史を誇っている。
レースの中心となるのが、スキーヤーをクルマで牽引するスキージョリングと呼ばれる一風変わったスポーツだ。
最初のスキージョリングのイベントは、1937年、オーストリアのツェル・アム・ゼーにある氷結湖を舞台に行われており、この時はバイクがスキーヤーを牽引していた。
最初に「ポルシェ博士記念スキージョリングレース」が開催されたのは1952年のことであり、翌年には通常の自動車レースもイベントに加えられている。
その後、このイベントは毎年恒例となったが、天候不順によるキャンセルが相次いだことから、1963年からは、舞台をツェル・アム・ゼーの飛行場へと変更している。
だが、1974年を最後にレースはキャンセルされ、以降毎年恒例だったこのイベントが開催されることはなかった。
復活したGPアイスレースでは、タイムアタックとレース、そしてスキージョリングが行われるが、その大きな目的は、この雪上のモータースポーツに古今東西の名車を集めることにある。