【愚かさと賢さの同居】いすゞDマックス・アークティック・トラックスAT35へ試乗
公開 : 2020.03.30 10:20
アークティック・トラックスが手掛けたいすゞDマックスAT35。大径オフロードタイヤを履き、リフトアップされていますが、英国では商用車扱いとなるピックアップです。2020年モデルを英国編集部が評価しました。
大径オフロードタイヤにビルシュタイン
今回紹介するのは、普通のピックアップとは少し違う。いすゞDマックスをベースにした、アークティック・トラックスの最新版、AT35だ。
過酷な環境にも耐えるオフローダーを生み出してきた、アークティック・トラックス社が手掛けたクルマ。フォードが高性能なレンジャー・ラプターを生み出す以前から、類を見ない技術力でピックアップを仕立ててきた歴史を持つ。
AT35が履くのは、17インチの10Jホイールに、フィンランドのノキアン製オフロードタイヤ。50mmストロークの長いサスペンションや、ビルシュタイン製のダンパーなどと合わせて、大きな特徴となる部分だろう。
タイヤの直径が大きくなったことと合わせ、車高は125mmもリフトアップ。ほかにも、オリジナルのサイドステップや、キルティング加工されたレザーシートなどを備える。
9.0インチのインフォテインメント用モニターと、前方のパーキングカメラも装備する。スマートフォンとミラーリングすることも可能。それ以外は、基本的にはDマックスの内容を保っている。
ボンネットの中には、いすゞ製の2.5Lの4気筒ディーゼルターボ・エンジンが納まる。最高出力163ps、最大トルク40.7kg-mを発生し、6速マニュアルか5速オートマティックを介して4輪を駆動する。試乗車は6速MTの方だった。
相当なインパクトの見た目を持つ商用車
最大牽引重量は3500kgで、フォード・レンジャー・ラプターとは異なり、英国では商用車に分類される。5年間か、何と20万kmの保証も付く。
大径タイヤを履くリフトアップされた商用車なんて、馬鹿げているようにも聞こえるが、それがAT35。見た目は相当なインパクトがある。筆者はこの手が好きだが、もし嫌いなら、中に乗ってしまえば良い。
少しよじ登る格好で運転席に座る。シートトリムは張り直されているが、もとが商用車だったことは明らかにわかる。シートの取り付け位置が高く、頭上空間は見た目ほど広くはない。
フォード・レンジャーやフォルクスワーゲン・アマロックは、比較的乗用車のような着座姿勢だが、AT35はアップライトで三菱L200に近い。床面が高く、ルーフが低い。
それでも車内は快適。タッチモニターの操作もわかりやすく、スマートフォンをミラーリングさせれば、より使いやすくなる。
2.5Lの4気筒ディーゼルを始動させれば、さらに商用車感は強まる。アイドリング時から振動は大きく、エンジンが冷間時の加速はかなり気だるい。一度温まってしまえば、レスポンスは向上し、静止状態からの加速もたやすくスムーズにこなす。
トルクは太く、選ぶギアを悩むことは殆どない。レンジャー・ラプターとは異なる点だ。力強く走れるギアは低い3速くらいまでだが、特に驚く事実ではないだろう。
乗り心地は良いとはいえず、ステアリングの反応もスロー。全体的な洗練性では、4万ポンド(540万円)のSUVとしては物足りない。だが、ドライバーを笑顔にはしてくれる。