【アルピナと25年ぶりの再会】BMW E30 M3と別れて手に入れたC2 2.7 後編
公開 : 2020.04.11 16:50 更新 : 2020.12.08 10:55
2015年のシルバーストーン・クラシックに向けてアルピナC2 2.7。放置車両が発見され、新車当時の技術者の手で復活を遂げました。今では一家の宝物へと変わった、E30 M3とは異なる魅力を確かめてみましょう。
25年前のようにワークショップでアルピナを組む
今回のアルピナC2 2.7だが、アルピナの英国ディーラー、シトナー社を1989年に離れてから、その後は良くわかっていなかった。英国のアルピナを作ったマーク・アドキンも、シルバーのC2 2.7を組み上げるとシトナー社を離れた。
「1989年4月、法律が変わったのです。チューニングする前に、すべてのクルマは税金と保険を支払う必要があると、英国政府が定めたのです。その結果作業時間が延び、わたしの仕事を奪いました」
「1週間にクルマを1台か2台、仕上げるだけになったのです。その後の変化も望めなかったので、ポルシェのガレージへ転職しました」
仮にアルピナの50周年を祝うイベントが、2015年のシルバーストーン・クラシックで開かれていなければ、アドキンとアルピナとが再び交差することはなかったかもしれない。このイベントが、C2 2.7のレストアへと導いたのだ。
シトナーに務めるマシュー・ストリッピングは、ガレージで何年も放置されていたクルマを手に入れた。古いカーペットが重なった下で、半分忘れ去られていたクルマだった。それこそ、今回のナンバーF885 JCHを付けたアルピナC2 2.7だ。
すぐに50周年イベントに向けた計画がスタート。E30は、シルバーストーンへと降り立つことが目指された。
「マシューが電話をかけてきて、戻ってもう一度組み立てて欲しいと話したので、アルピナを当時の状態に戻したんです」 25年前のワークショップのように、シトナー社内にはアドキンが作業するエリアが確保された。
良い状態を保っていたC2 2.7
シトナー社を離れてからも、アドキンはクルマの整備に深く関わっていた。彼がストリッピングから電話をもらった時も、ランチア037と、ハリ・トイヴォネンがドライブしたメトロ6R4を仕上げたばかりだった。
「彼らはリフトや工具など、必要なものをすべて準備してくれました。1989年の時のように。エンジン、トランスミッションなど、すべての部品が残っており、一度すべてクルマから外しました」
「新しいダンパーとスプリング、ブレーキホース、大容量の燃料タンクを取り付けました。フランク・シトナーは満タンにすることがなかった、63Lの大きなものです」 アドキンが笑って話す。
「シャシーは修復した様子もありませんでした。前のオーナーが1990年代に全塗装をしていたので、状態はほぼ完璧でした。長年生き抜いてきたにも関わらず、シャシーは新車と変わらないようにも見えたほどです」
「大きなリップスポイラーなど、手を焼く部分も確かにありました。すべてのライト類が黒く塗られていたので、元の状態に戻すために交換してあります」
「部品も問題なく入手できました。ほとんどはBMWから調達できましたが、ないものは別のルート、製造メーカーなどから入手しました」 アドキンは1人で作業を進めたが、シルバーストーンでのセレモニーイベントへ間に合わせるべく、5カ月で仕上げた。
C2 2.7がシトナーのワークショップを離れたのは、鋭い眼光のレーサー、デビッド・ハントに出会ってから。「新しいBMWを探しにシトナーへ伺ったんです。そこでC2を目にしました」 と振り返るデビッド。