【F1開幕に好影響?】コロナ禍 モータースポーツ運営の難しさ 米NASCARは再開、なぜ?
公開 : 2020.05.09 05:50
アメリカンモータースポーツで最大の人気を誇るNASCARが約2か月ぶりの再開です。MLB、NBA、NFLなどより、ひと足早く再開できた背景に、政治/ビジネスの思惑があると筆者(桃田健史)は考えます。
NASCAR 再開すれば約2か月ぶり
NASCARのレース再開は、F1やスーパーGTに好影響を与えるだろうか?
アメリカンモータースポーツで最大の人気を誇るNASCARが4月30日、最上位「カップシリーズ」で、実質的な第5戦となるサウスキャロライナ州ダーリントン戦決勝を5月17日に無観客で行うと発表した。再開すれば約2か月ぶりとなる。
カップシリーズは2月のフロリダ州「デイトナ500」(2月17日)でシーズンが開幕。
その後、第2戦ネバダ州ラスベガス(2月23日)、第3戦カリフォルニア州フォンタナ(3月1日)。
そして第4戦アリゾナ州フェニックス(3月8日)まで開催したが、トランプ大統領が3月13日、国家非常事態宣言を発令してからカップシリーズを含めたすべてのNASCARシリーズの開催が延期された。
4月17日には、トランプ政権は経済活動再開に向けた指針を発表。
それによると、第1段階では学校は休校を維持し、仕事ではテレワークを中心として通勤を認める。
第2段階では、学校を再開し移動の制限を緩和。
第3段階では、ソーシャルディスタンスを保つなどを心掛け、一般生活に戻れるとした。
ただ、各州で経済活動再開の方針が異なるため、NASCARレース開催地によって観客への対応が分かれる可能性もある。
未だにMLBなど米大手スポーツは再開の目途が立たない中、なぜNASCARは再開されたのか?
NASCAR、経済活動の政治的もくろみ
第一は、政治判断だと筆者(桃田健史)は思う。
経済回復の機運を高めたいというトランプ政権の意向は少なくないはずだ。
トランプ大統領は今シーズン開幕戦デイトナ500を訪れ、大統領専用車でコースを1周し「NASCARはアメリカの栄光だ」と集まった10数万の観客にアピールしている。
今年で4年目を迎えたトランプ大統領は、選挙運動中から「強いアメリカを取り戻す」ことを強調してきた。
その中で「バイ アメリカン(アメリカ製品を購入しよう)」というフレーズを使う。
その筆頭が、アメ車(ゼネラルモーターズ、フォード、フィアット・クライスラーオートモービルズ)だ。
さらに、トヨタやホンダなどアメリカ現地生産する海外メーカーもトランプ政権にとっては、アメリカ国内で工場建設に投資し、雇用を確保する「アメ車の仲間」という解釈だ。
人工呼吸器についても、トランプ大統領は4月1日、GMに対して国防生産法に基づいて製造を命令した。
GMによるアメリカ製という事実が、同政権にとって必要だったに違いない。
こうした文脈の中で、トランプ政権としては、全米で経済活動を再開するにあたりNASCARがフラッグシップになり得る、というイメージを持っているに違いない。
第二の理由は、同じく雇用重視について、NASCAR産業に関わる人々に対する収入の回復がある……。