【なぜ?】フェラーリF355、人気急上昇 相場は800万円以上に 右肩上がりの魅力を探る

公開 : 2020.05.20 11:20  更新 : 2021.10.11 09:33

「フェラーリF355」の人気が高まっています。26年前に登場したV8ベルリネッタ。なぜ、魅力が失われないのでしょう? その理由には、性能・デザインに加え、現行世代の価格づけも関係しているようです。

1994年デビュー 10年前から上昇相場

text&photo:Kazuhide Ueno(上野和秀)
photo:Hidenori Hanamura(花村英典)、Ferrari

フェラーリF355の人気が高まっている。

5~6年前なら程度を問わなければ500万円台から買えたが、今ではボトムで800万円台まで上昇。マニュアル・ギアボックスで低走行を保つベルリネッタの極上車なら、当時の新車価格1570万円以上のプライスタグが付くほどだ。

人気が高まっているF355。MT、低走行のベルリネッタなら、程度次第で当時の新車の値段を超える価格帯に。
人気が高まっているF355。MT、低走行のベルリネッタなら、程度次第で当時の新車の値段を超える価格帯に。

フェラーリといえど量産されたモデルは時とともに値落ちするのが普通。しかし、F355はリーマン・ショック後の2010年過ぎに底値まで落ちたのち、上昇に転じた。後継モデルの360系を上回る値を付けるようになっている。

値が上がるということは、経済の原則どおり欲しいヒトの数が供給を上回るからに他ならない。

デビューから25年余りが経過したネオクラシックといえるF355のどこに惹かれるのだろう。

筆者は新車時の発表会からF355に接し、当時様々なタイプを乗ってきたジャーナリストとしての視点に加え、個人的にも所有していたことからオーナーとしての目線でその魅力を探ってみた。

フェラーリF355 どんなクルマ?

F355は1994年にデビュー。現行のF8トリブートの5世代前のモデルになる。

その位置づけは、量産8気筒モデルでエンジンをミドシップ縦置きに搭載し、モノコックシャシーを初めて採用した348シリーズの発展型となる。

5バルブのV8を積むF355。最高速度は295km/hに達する。
5バルブのV8を積むF355。最高速度は295km/hに達する。

排気量を3495ccまで拡大するとともに、5バルブ・シリンダーヘッドの採用により、それまでの排気量+気筒数というモデル名ではなく、3.5Lで5バルブということから「355」と名付けられた。

ミドに搭載するV型8気筒エンジンの最高出力は380bhp/8200rpm。ギアボックスも6速にアップグレードされ、最高速度は295km/hに達した。

スタイリングは、ピニンファリーナが担当し、フェラーリのミドシップ・スーパーカーの伝統といえるリトラクタブル式ヘッドランプ、リア・ウインドウがキャビンの直後で垂直に位置するトンネルバック・スタイルを受け継ぐ最後のモデルとなった。

ボディタイプは当初ベルリネッタとタルガトップのGTSだけだったが、1995年から電動式フルオープンのスパイダーが追加されている。

F355 メカ/外観の魅力

こうしたパフォーマンスの向上に加え、当時低迷していたフェラーリを立て直していたルカ・ディ・モンテゼモロ社長が掲げた「誰にでも乗れるフェラーリ」に則り、パワーステアリングが採用されたことが大きなポイントだ。

それまでのフェラーリは重ステ(12気筒4座モデルを除く)が当たり前で、女性ならずとも手強い存在だった。さらにクオリティも向上させ、高い信頼性を確保したことが成功の一因といえる。

モンテゼモロ体制のもと、重ステに別れをつげ「誰でも乗れる」路線に。97年にはF1マティックが登場。
モンテゼモロ体制のもと、重ステに別れをつげ「誰でも乗れる」路線に。97年にはF1マティックが登場。

「誰にでも乗れるフェラーリ」路線はさらに推し進められ、1997年になると2ペダル・パドルシフトのF1マティックを追加。F1マティックは全ボディで選ぶことができ、F355は一躍世界的な大人気モデルとなり、フェラーリの経営を盤石なものにした。

また、ルックスに関していえば、フェラーリの歴代ミドシップ8気筒ベルリネッタの中で、最も均整のとれた美しいスタリングを備えるのがF355だ。

スーパーカーらしい低いノーズから、パワーを感じさせるボリュームがあり、ワイドさを強調したリア・デザインなど、すべてが見事に融合し、完成度が高い。そのデザインは存在感もあり、今の目で見ても魅力的だ。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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