【メルセデス・ベンツ vs BMW】コンパクトモデルぞくぞく投入の舞台裏 商品&販売戦略やや違う
公開 : 2020.05.27 05:50 更新 : 2021.10.22 10:15
メルセデス・ベンツ/BMW/アウディといった欧州のプレミアムブランドは、ぞくぞくとコンパクトモデルを投入しています。しかし、一見おなじことをしているように見えますが、両者の戦略は、やや違うものでした。
メルセデスとBMW、小型車を充実
かつてのメルセデス・ベンツ、BMW、アウディといった欧州のプレミアムブランドは、商品開発と販売が軌道に乗ってからは、コンパクトな車種をあまり手掛けなかった。
1990年代の中盤まで、メルセデス・ベンツではCクラス、BMWは3シリーズ、アウディではA4が最小サイズだった。
メルセデス・ベンツの場合、もう少し時代を遡って1980年代初頭にCクラスの前身となる190シリーズを発売する前は、今のEクラスが「コンパクト・メルセデス」と呼ばれた。
そのほかは上級のSクラス、スポーツカーのSL(往年の高性能な300SLではなく190SLから成長したタイプ)程度で、車種構成はシンプルであった。
そのために数字とアルファベットの表記も成り立った。今も同様の表記だが、車種の数が増えると、日本車のようなペットネーム(例:「マツダ2」に対する「デミオ」)でないとわかりにくい。
この流れが1990年代の後半から変わり始めた。
1998年には日本にもコンパクトな初代Aクラスが導入され、個性的な造りではあったが、200万円台の価格設定などによってメルセデス・ベンツでは新しいユーザーを獲得した。
2000年に入ると、メルセデス・ベンツCクラスが3ドアハッチバックのスポーツクーペを用意して、カジュアルな雰囲気を演出する。
BMWも3シリーズに3ドアハッチバックのtiを加えた。316 tiは1.8Lエンジンを搭載したが、最も安いグレードの価格は299万8000円に抑えた。
この後、両ブランドともSUVを加えて、さらにバリエーションを増やした。
プレミアムブランド、小さい方に人気移行
プレミアムブランドは、各車種の個性よりもブランドの持ち味を重視する。
例えば「Cクラスが欲しい」のではなく「メルセデス・ベンツが欲しい」と思わせるクルマ造りをする。まずはブランドを決めて、その次にCクラスという車種を選ぶわけだ。
ブランドで選択するクルマ造りを突き詰めると、フロントマスクや内装は、ボディサイズやエンジン排気量の大小に係わらず同じ価値観を備える。
日本車のクラウンとカローラでは、デザインと雰囲気がかなり違うが、メルセデス・ベンツのEクラスとAクラスには相似性がある。
その一方でEクラスとAクラスの価格には約2倍の開きがあり、価値観が似ているのであれば、安い後者が買い得と受け取られる。
Aクラスは避けたとしても、多くのユーザーは後輪駆動で最も小さなCクラスに落ち着く。
その結果、2019年度(2019年4月から2020年3月)の輸入プレミアムブランドで最も多く登録された車種は、メルセデス・ベンツCクラスであった。
次はAクラス、続いてBMW 3シリーズと続く。ボディの大きなメルセデス・ベンツEクラスはCクラスの半分以下で、BMW 5シリーズは大幅に少ない。
コンパクトあるいはミドルサイズが売れ行きを伸ばす。
この点について販売店に尋ねると、メルセデス・ベンツとBMWでは見方が分かれた。