【冠水した道での判断】メルセデス・ベンツE 300de EQパワー(6) 長期テスト

公開 : 2020.06.07 11:50

長距離に最適なディーゼルエンジンと、都市部に適したハイブリッド、ステーションワゴン・ボディという、理想的な組み合わせに思えるE 300de。短距離ならEVモードでの走行も可能です。実力を長期テストで確認します。

積算1万7393km 突然に見舞われた冠水

text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
いつもより湿気っぽい、ある日のドライブ。メルセデス・ベンツは至って普通だった。スタッドレスタイヤのピレリ・ソットゼロは、意に介さないように水を切り進む。紅海を切り分けるモーゼのように。

どうやら堤防が決壊したらしい。街の北部の主要な道は、完全に冠水していた。筆者と家族はイングランド西部、ヘリフォードの郊外へ一時的に身を移すことになったほど。

 メルセデス・ベンツE 300de EQパワー SEエステート(英国仕様)
メルセデス・ベンツE 300de EQパワー SEエステート(英国仕様)

その日は、イングランド北部への長距離ドライブが必要だった。ランナバウト(ロータリー交差点)は、どこが道かわからない。大型トラックが走る軌跡を見て、水の浅い場所を探りながら進む。クルマのボディに水が当たる音が心地悪い。

前方がどのくらいの深さなのか、運転席からはちゃんと判断できないが、通過できると考えていた。充分なスピードで走らせて水を押し出し、引波を作り、ボディサイドへ高い水が来ないようにする必要があった。

向かい側から大きなピックアップ・トラックが来るまでは、何事もなく進んでいた。サスペンションとタイアでリフトアップされたボディが、怪物のように突っ込んでくる。

そのピックアップは、浸水した道でも走破できることを楽しんでいる様子。すれ違ったドライバーへの影響は、一切考えていないのだろう。

ピックアップと一緒に目の前に迫ってきたのは、大きなタイヤが押し出した水の壁。メルセデス・ベンツと筆者が水に沈むことは明白だった。

プラグインハイブリッドの隠れたメリット

メルセデス・ベンツE 300de EQパワー・エステートは素晴らしいクルマだが、オフローダーではない。エンジンルームのエアインテークが水に浸れば、大きな問題を抱えてしまう。最悪の場合、エンジンの載せ替えも必要となる。

運良く、冠水した道を走っていた時間が長かったことで余裕があり、良いアイデアを思いついた。あっという間だったら、機転は効かなかったかもしれない。

 メルセデス・ベンツE 300de EQパワー SEエステート(英国仕様)
メルセデス・ベンツE 300de EQパワー SEエステート(英国仕様)

E 300de EQパワー・エステートにはエンジンを停止させEVモードとして走れる、Eモードが付いている。そのボタンを押して、ディーゼルエンジンを止めた。すぐにガラスの外の景色は、茶色の水と、漂う何かの破片でいっぱいになった。

無事にE 300de EQパワー・エステートは電気の力で走り抜け、冠水部分を通過することができた。もしエンジンを回したままだったら、故障せずに済んだだろうか。

これまで考えもつかなかった、プラグイン・ハイブリッドのメリット。クルマとして最高の秘めた力だ。それ以来、E 300de EQパワー・エステートへは感謝の気持ちが止まらない。

もしEVモードで走れなければ、どうなったか想像がつかない。小川の中を、泳ぐことになったかもしれない。

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