【なぜ】フェラーリ288GTO、海外オークションの人気に変化 高値安定も、気になるトレンドが
公開 : 2020.06.11 07:50 更新 : 2021.10.11 09:32
「フェラーリ288GTO」の人気に変化が…。世界のコレクターズカー・オークションを80年代から追いかけている上野和秀さんが、気になるトレンドを解説。エンツォ、F50の存在が関わっていました。
グループB計画のベース プレミアム・フェラーリの始祖
ラ フェラーリに至るフェラーリ・プレミアムモデルの原点となったのが、1985年に登場した「288GTO」だ。
エンツォ・フェラーリの命でグループBレースに挑むために、ホモロゲートを取得すべく義務最低生産台数の200台が作られる計画だった。しかしレースが開かれず活躍の場を失う。
一方で、フェラーリ・コレクターの間では久しぶりのレース用ベース車両ということで大人気となる。
世界中から注文が殺到し、当初200台の予定だったものが最終的に272台も作られることに。
余談だが、正式なモデル名は数字を含まない「GTO」となる。250GTOと区別するため自然発生的に「288GTO」と呼ばれるようになった。
日本上陸は約30台 バブル後は3500万円に
日本に正規輸入された288GTOは、御殿場の旧フェラーリ美術館に納車された1台だけで、このほかは並行輸入で上陸している。
90年代初頭のバブル期は、分かり易いスタイルのF40が2億5000万まで上がったの対し、玄人好みの288GTOはあまり注目されなかった。
ちなみに288GTOは、筆者の調査によれば日本で約30台が確認されている。しかし、近年のコレクターズカー・バブル前に日本での価格が為替レートも含めて割安だったことから、欧米のブローカーの目に留まり、かなりの数が流出してしまった。
この海外流失では、288GTOに限らずF40、エンツォ、割安だったフェラーリ人気モデルをはじめ、ポルシェ、ランボルギーニなどのアイテムカーがごっそり持って行かれてしまう。国内に残るのは僅かになってしまった。
90年代のバブル後には、288GTOは3500万円ほどで販売されていた。それが、21世紀に入ると“億車”の仲間入りをする。
大きく動いたのが2014年からのコレクターズカー・バブルで、同年1月のRMサザビーズ・アリゾナ・オークションでは3億2175万円を記録。
しかし相場のバブルは続かず、2016年8月のボナムス・クエイルロッジでは、2億1120万円で底を打つ。
エンツォ、F50が上昇 なぜ?
その後、再び上昇に転じ、2019年1月のRMサザビーズ・アリゾナ・オークションには、走行4582kmという新車同様車が出品。
3億6960万円という過去最高記録を樹立する。
そして直近では、5月29日に終了したRMサザビーズのオンライン・オークションに288GTOが姿を現し、コロナ禍の状況ながら2億4948万円で落札された。
最近のオークション結果をフェラーリのプレミアムモデルまで広げて精査していくと、気になる動きが浮かび上がってきた。
F50とエンツォの評価が高まり、288GTOが弱くなってきている。
前述のオンライン・オークションに出品されたエンツォは2億8512万円。288GTOを上回る額で落札され、その流れの変化を物語っていた。
現在のプレミアム・モデルの人気を示すと、ラ フェラーリ>エンツォ>F50>288GTO>F40という構図になる。
出自に至るヒストリーと流麗なスタイリングで人気を集めてきた288GTOも、時代の流れには逆らえなかった。
いざ乗るとなるとマニュアルで、重いクラッチと重ステという現実が、楽に乗れるモデルを求める現在の主流となる購買層から敬遠されてきたようだ。
クルマを取り巻く状況が大きく変わりつつある中において、これから288GTOのポジショニングがどのように変わってゆくのか興味深い。