【スピード違反は減らない?】ボルボの最高速度制限に、意味はあるのか
公開 : 2020.06.26 17:50
ボルボが発表した「最高速度を180km/hに制限する」方針は、今後すべてのラインナップに適用されていきます。安全性向上に大きな違いをもたらすことはなさそうですが、議論を深めることが重要だと担当者は語ります。
180km/h制限では、スピード違反は減らない
ボルボは昨年3月、安全性向上を目的に、全モデルの最高速度を180km/hに制限すると発表。今後、ラインナップ全体に適用されていくが、これで本当に事故は減るのだろうか。
180km/hという上限速度は、ドイツを除くすべての国の制限速度をはるかに上回っている。そもそも、スピードを出したいドライバーは、ボルボを買わないという選択肢を取るだろう。
ボルボ・カーズ・セーフティ・センターの責任者であるマリン・エクホルムも、「時速180kmではまだ速いので、これでスピード違反がなくなることはないでしょう」と明かしている。
では、なぜボルボはこのようなことをしているのだろうか?
「時速180kmを超えるスピードを出す理由はどこにもありません」
「スピード違反については誰もが問題視していますが、私たちは本気で取り組んでいるということを示すために行動したかったのです。そうすれば、この問題についての議論が深まると考えました」
ボルボにとって、速度制限(スピードキャップ)は交通安全を推進するための最新の取り組みである。
ボルボは世界で初めて3点式シートベルトを導入し、構造的安全性と衝突防止システムの業界基準を押し上げてきた会社だ。
「その結果、多くのお客様が私たちの活動を非常に支持してくれています。ボルボが選ばれた理由の1つは、私たちが安全性を重視しているからです」
自動車メーカーとしての責任感
最高速度の制限については、シニカルな反応も多かった。しかし、エクホルムは次のように述べている。
「私たち人間の脳は、ハイスピードを高いレベルで理解するようにプログラムされていません」
「では、どうすればいいのでしょうか? 移動の自由と安全のバランスをとるには? ロードマップは? そして、懐疑的な人たちをどのように取り込むか?」
「今回の速度制限は、安全な速度とはどのくらいなのか、そしてそれを守るためにはどうすればいいのかを考えるための第一歩です」
エクホルムは、ボルボが安全な速度を決めるためにやっているわけではないと主張している。
「私は今年、ストックホルムで開催された国連交通安全会議に出席しましたが、そこでは政治家、交通当局、NGOがスピード違反について話し合っていました」
「各グループにはそれぞれ、できることがあります。例えば、政府は法律を導入することができます」
「私たちは自動車メーカーとして、速度制限などのアイデアを議論に持ち込み、どうすればあらゆる状況で安全を確保できるかを検討したいと考えています」
「20年前は、速く走ることが必ずしも楽しいとは限りませんでした。快適性が損なわれるからです。今のクルマは素晴らしく、高速走行時でも快適です」
ボルボは速度制限と同様に、オーナーが他の人にクルマを貸す際に速度を制限できる「ケアキー」を導入している。だが、ボルボが重視しているのは人間の側面だとエクホルムは主張する。
「私の仕事は、何に対処する必要があるのかを理解すること。そして、技術を使ってそれに対処することです」
この目的のために、ボルボはさらなる措置を計画中だ。
例えば、他の自動車メーカーと同様に、ドライバー監視システムを開発している。これは来年発売される予定で、飲酒運転や体調の良くない人が運転するのを止めることができる。
ただ、システムにはカメラを使用するため、ボルボがドライバーを監視するのではないかという不安もある。
「ドライバーが車中で何をしているかを知るために撮影するわけではありません」
「頭と目の動きを読み取り、正常に運転中しているのか、それとも助けが必要なのかを判断するために使われます」
速度制限などの措置は、単なる1つの試みに過ぎない。クルマの安全性向上に取り組み続けるボルボの姿勢には学ぶべきものも多いだろう。