【日本では想像できぬ意外なきっかけ!?】BMWやポルシェが巨額投資で自前サーキットを建設する理由
公開 : 2020.06.29 05:50
自分のクルマを思い切り走らせたい場合、サーキットやオフロードコースに自分のクルマを持ち込むのが一般的です。いっぽうメーカー主導の走行体験型施設が増えています。海外の動きが日本に派生。理由を探ります。
メーカー主導の走行体験型施設、増加
ハイパフォーマンス車を、思い切り走らせたい。そう思うユーザーは、サーキットやオフロードコースに自分のクルマを持ち込むのが一般的だ。
一方で、海外では最近、自動車メーカーがメーカー自前の施設で、ユーザーが最新モデル各種を操り本格的な走行体験ができる試みが広がっている。
日本にも、計画がある。
ポルシェジャパンは2021年に、「エクスペリエンスセンター」(千葉県木更津市内)を開業する予定だ。2018年末に計画を発表している。
アメリカではすでに南部ジョージア州アトランタ郊外に同様の施設がある。
ショートサーキットやオフロードコース、またウェット路面を体験施設など、まるで自動車メーカーのテストコースのような充実した内容だ。
この他には、BMWが「パフォーマンスセンター」として、韓国を皮切りにアメリカでは南部サウスキャロライナ州や西部カリフォルニア州で大規模な施設として運用している。
ポルシェもBMWも、基本的には施設側が用意する車両を使い、初歩的な走行体験から、いわゆるレーシングスクールのような本格的な内容まで、プログラムの内容は多彩だ。
それにしても、なぜ最近になって、こうしたメーカーが主導する走行体験型施設の建設が進むのか?
背景には、自動車産業界が直面している大きな課題がある。
きっかけは、ディーラーへの来客急減
「課題」が浮き彫りになったのは、アメリカのディーラーだった。BMWやポルシェに限らず、アメリカではディーラーへの来客数が急減してしまったのだ。
具体的な数字を、BMW USAの幹部が示した。
2015年1月半ば、ミシガン州デトロイトで行われた、米自動車関連の大手メディア「オートモーティブ・ニュース」主催の業界向けカンファレンス。自動運転、EVなどの電動化、そして新しい販売戦略など、世界各国の自動車メーカー幹部が、業界の実情と将来について話し合う場である。
メディアとして参加した筆者(桃田健史)にとって、数ある講演の中で最もインパクトが大きかったのが、BMW USAが示した「数字」だった。
この「数字」とは、BMW購入を考えているユーザーが、ユーザー自宅近くのBMWディーラーを訪れる回数の変化を示したものだ。
2003年には、1ユーザーあたり4回だった。
それから11年後の2014年には、なんと1回になってしまったのだ。
なぜ、1回なのか?
それは、最終契約した後、アメリカでは仮ナンバーで持ち帰ることができるため、来店は1回で済むのだ。
それまで、ユーザーは新車を購入するために、一度もディーラーに足を運ばなかったということだ。
なぜ、そうなってしまったのか?
そこには、ネット社会の発達と、アメリカ特有の社会事情がある。