【フレンチブルーのアルファ】アルファ・ロメオ8Cモンツァの栄光 前編

公開 : 2020.07.25 07:20  更新 : 2020.12.08 08:33

鮮やかな水色のアルファ・ロメオ8Cモンツァ。1930年代、フランス人プライベーターがドライブした、グランプリ・マシンです。ファクトリー・チームを相手に素晴らしい戦いを見せた貴重な1台に、英国編集部が試乗しました。

フランス人プライベーターの8Cモンツァ

text:Mick Walsh(ミック・ウォルシュ)
photo:Will Williams(ウィル・ウイリアムズ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
今も昔も、トップフォーミュラで戦うことが許されたドライバーは、限られていた。

その1人、フランス人プライベート・レーサーのフィリップ・エトンスランは、多くのマシンで活躍したことで知られている。イタリアのタツィオ・ヌヴォラーリやアルゼンチンのファン・マヌエル・ファンジオなどと対等に渡り合った。

アルファ・ロメオ8Cモンツァ(1933年)
アルファ・ロメオ8Cモンツァ(1933年)

現在、彼の戦いを間近に感じ取る方法は、生き残ったマシンへ触れること。今回ご紹介するアルファ・ロメオ8Cモンツァも、その1台。フレンチブルーに塗られた2シーターのグランプリマシンで、フィリップは1933年シーズンを戦った。

現オーナーのピーター・ノイマークから電話をもらったのは2019年の秋。グッドウッド・フェスティバルで、この素晴らしいマシンのデモンストレーションへ筆者を招いてくれた。言葉を失うほどうれしかった。イベントではヘルメット着用の義務もない。

筆者はこれまで、アルファ・ロメオ8Cの本を執筆し、写真を収集し、モデルカーも作ってきた。何台かのモンツァに乗ったことはあったが、最速の8Cをドライブしたことは一度もなかった。

子供の頃から50年近く、アルファ・ロメオ8Cモンツァの機能的なスタイリングに魅了されてきた。同時期のブガッティと比べると、エレガントさには欠けるかもしれない。しかしラジエーターとガソリンタンクがボディと一体になり、丸みを帯びたフォルムは強いオーラを放っている。

ヴィットリオが生み出した直列8気筒

長いフロントカウルに、後ろへ伸びたエグゾースト。サーキットだけでなく、路上でも走りを楽しめる、究極のグランプリ・マシンだと思う。

アルファ・ロメオ8Cの栄光を振り返ることは難しくない。シングルシーターのティーポBへと展開する、ヴィットリオ・ヤーノのエンジニアとしての素晴らしい才能は、誰もが認めるところだろう。

アルファ・ロメオ8Cモンツァ(1933年)
アルファ・ロメオ8Cモンツァ(1933年)

8Cモンツァのエンジンをスタートさせる。スーパーチャージャーの深い唸り音が、胸に響く。絞られた長いノーズに収まる、ヴィットリオのマスターピースといえる直列8気筒エンジン。狭いピットレーンでノイズが反響し、増幅される。

トランスミッションやベアリング、スーパーチャージャーからの機械音が混ざり合い、オーケストラのようだ。最高のエンジンが、最高の1曲を奏でる。湿った空気の天気だが、終始、エンジンは拍子をおかずに始動した。

ピットレーンからの加速で、低回転域からの太いトルクに驚かされる。回転はスムーズ。5500rpmのレッドラインめがけて吹け上がり、パワーは途切れない。巨大なレブカウンターが、ステアリングコラムに取り付けられている。

スタート当初に重く感じられたステアリングは、スピードが増すほどに変化していく。マジウイック・コーナーを抜ける。シャープで極めて反応が良い。フィードバックも濃く、ステアリングホイールへは路面が濡れていることが伝わってくる。

2018年のグッドウッド・メンバーズ・ミーティングでも証明されていたが、モンツァは素晴らしくバランスが良い。ドリフトさせるのも難しくない。

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

人気記事