【NAフラット6が復活】ポルシェ718ボクスター GTSへ試乗 毎日のスペシャル
公開 : 2020.07.21 10:20
特別なドライビング体験を得られるポルシェ718ボクスターに、自然吸気のフラット6を搭載したGTSが登場。日常的な利用も難しくない、運転のしやすさも特徴です。クラス・ベストといえるのか、英国の一般道で評価しました。
もくじ
ー一度はフラット4が選ばれたGTS
ー400psを発生する自然吸気のフラット6
ー総合点で考えると最も手頃なモデル候補
ー思い描いた通りのラインをトレースする
ースーパーカー級の特別なドライビング体験
ーポルシェ718ボクスター GTS 4.0(英国仕様)のスペック
一度はフラット4が選ばれたGTS
6年ほど前、ポルシェはボクスターとケイマンのモデル名に、718という数字を加えた。同時にフラット4、水平対向4気筒エンジンの搭載も決定した。
エントリーグレードだった2.7L版と、人気の高かったSの3.4L版のフラット6は消滅。ダウンサイジング・ターボがポルシェ製ロードスターにも採用されたことを意味していた。ボクスターの輝きは霞んでしまった。
ポルシェ・ファンには、耐え難い方針だっただろう。その後、ポルシェは高価な特別仕様のスポーツカー需要に気づく。メカニズムの純粋さと熱量が重視される市場でもあり、2.5Lのフラット4では不十分だということにも気づいた。
しかも同じフラット4でも、従来のスバル・インプレッサに搭載されていたユニットと比べると、パワーを絞り出す魅力は半分程度。予想外の流れだったのかもしれない。
そこでポルシェは、フラット6の再登用を計画する。選んだのは、型落ちのケイマンGT4とボクスター・スパイダーに搭載されていた3.8Lユニットや、9000rpmまで吹け上がる991型911 GT3用4.0Lユニットではない。
ベースになったのは、現行992型の911カレラに搭載される3.0Lユニット。ターボチャージャーを取り外し、排気量を増やすことで、専用の4.0Lユニットを製作した。
モータースポーツ・シーンに近い、718のフラッグシップのために設計されたユニットではある。ところが、開発費用を効果的に回収するため、手の届きやすいGTSグレードにも新生4.0L自然吸気フラット6が搭載されることになった。
400psを発生する自然吸気のフラット6
ポルシェ911 GT3にMTが復活して以来の、大きな方向転換ともいえる。すべての718モデルでこのNAフラット6が選べないとしても、選択肢として返り咲いたのだ。素晴らしい決定だ。
さあ、そのポルシェ718ボクスター GTS 4.0が目の前にある。夢中になるな、という方が難しい。
現代的な雰囲気を漂わせる、装備も充実したミドシップ・スポーツカー。4.0LのNAフラット6が発生する最高出力は7800rpmで400ps。最大トルクは42.7kg-mある。ペダルは3つ並び、車重は1405kgに仕上がっている。
ロータスのように軽いわけではない。24年のボクスターの歴史を振り返れば重い方だが、まだ軽いとは呼べるだろう。しかも質量は、ホイールベース内に集中している。
NAフラット6はドライバーの背中、遠く後ろにぶら下がっているわけでもない。甘美なミドシップ・レイアウト。復活はもうない、と一度は考えさせた構成だと実感する。
エンジンから後ろに伸びるのは、機械式のシンプルなLSD。ブレーキで制御されるトルクベクタリング機能が組み合わされる。ステアリング・ラックは油圧ではなく電動式だが、ポルシェのシステムはかなり熟成されている。
クルマのフロント部分と、エンジンの後ろのコンパートメントには、必要充分な大きさの荷室を用意。実用性も無視はしていない。
カンバス製のソフトトップは、64km/h以下なら走行中でも素早く開閉が可能。ちなみに標準モデルは、48km/hまでに制限されている。