【ジャガーを育てた伝説の男】故ノーマン・デュイス 100歳の誕生日
公開 : 2020.08.06 11:20
ジャガー・ランドローバーの伝説的なテストドライバー、ノーマン・デュイス。2020年8月3日は故人の100歳の誕生日でした。追悼の意を込めて、2018年に彼を取材したときのことを振り返ります。
ジャガーの発展に寄与したドライバー
2020年8月3日は、ジャガーが世界的なスポーツカーブランドとして確立する上で重要な役割を果たした伝説のテストドライバー、故ノーマン・デュイスの100歳の誕生日だった。
英AUTOCARが2018年にジャガーのコベントリー本社を訪問した際に、彼の話を聞く機会があった。これを機に、当時のことを振り返ってみる。
私たち取材班は、ジャガー・ランドローバーのクラシック・ワークス(旧車の製造・販売・レストアを行う施設)で、ノーマン・デュイスOBE(大英帝国勲章4等勲爵士)と落ち合った。
1952年に入社したデュイスは、取材時、ちょうど98歳の誕生日を迎えたばかりだ。
デュイスは小柄な人物で、現役時代は狭いレーシングカーのコックピットにも簡単に乗り込むことができた。
服装もパーフェクトで、いつもクロームメッキのジャガーが先端についた特注の杖を持ち歩いている。
クラシック・ジャガーの聖地
デュイスは、ジャガーの創業者であるウィリアム・ライオンズ卿と直接のつながりを持っているので、一緒にお茶を飲みながら、私は彼にこんな質問をしてみた。
「ライオンズ卿がこの場所(クラシック・ワークス)を見たら、どう思うでしょうか?」
クラシック・ワークスがオープンしたのは2017年のこと。ライオンズは1985年に亡くなっている。
安っぽい質問だが、デュイスの答えには、彼と創業者との親密な関係が表れていた。
「ウィリアム卿は、まず照明の半分を消していたでしょう」
「いつもお金の節約に熱心でしたから、昼間の光で十分だと言っていたと思います」
ライオンズの倹約ぶりは、結果的に顧客の利益にもつながった。
ジャガーが新型を発売するたびに、ライバルたちは、どうしてこんなにも洗練された技術を手頃な価格のパッケージに詰め込むことができるのだろうか、と不思議に思ったはずだ。
私たちは、整備を受けるXJ220や、生まれ変わったDタイプを見ながら施設内を歩いた。
新旧のランドローバーやレンジローバーの整備も行われている。
この場所は英国内のクラシックカーの一大拠点となっているが、生産量の多さが品質に代わるものではないことを、運営責任者のティム・ハニングは熱く語ってくれた。
「私たちの仕事には完璧が求められます」
「顧客にはさまざまな人がいますが、彼らは高級感と品質に慣れています。私たちはそれを提供しなければなりません」
作業台、工具キット、部品箱、エンジニアの制服、レストアカーから取り出された古い部品の山など、目にするすべてのものには、このスピリットが反映されている。
この光景を見たジャガーファンは感動を覚えるはずだ。