【待ち焦がれたグランドツアラー】新型フェラーリ・ローマへ試乗 620psの2+2 後編
公開 : 2020.08.09 10:20 更新 : 2021.08.05 08:08
フロントノーズにV8ツインターボを搭載するゴージャスなクーペ、フェラーリ・ローマ。2+2のグランドツアラーとして、優れた実用性にも焦点が向けられています。期待の最新モデルを、英国編集部がイタリアで評価しました。
もくじ
ー3.9L V型8気筒ツインターボに8速DCT
ーポルトフィーノの比ではない第一印象
ー軽快でリニア、懐が深いハンドリング
ー長い間われわれが待ち望んでいたクルマ
ーフェラーリ・ローマ(欧州仕様)のスペック
3.9L V型8気筒ツインターボに8速DCT
新しいフェラーリ・ローマがまとう美しいボディの内側にあるのは、アルミニウム製のシャシーで、ポルトフィーノと共通。フェラーリも認めている。
ただし、全体の70%はローマ用に新開発したという。重量や体積的に70%ではなく、部品の数ではないかと推測する。
主要な寸法を比べてみると、ホイールベースはポルトフィーノと一致している。反面、全高は明らかに低く、全幅とトレッドは広い。
ドライブトレインの搭載位置が見直され、ローマはポルトフィーノより重心高が20mmも低い。車重も100kg近く軽量だ。
エンジンは、ポルトフィーノだけでなくGTC4ルッソTにも搭載される、3.9LのV型8気筒ツインターボ。新しいカムと知的なターボ制御が与えられ、ポルトフィーノより最高出力は20ps高い。最大トルクの発生回転域も広げられた。
エグゾーストには、ガソリン・パティキュレート・フィルターが仕込まれている。サイレンサーはポルトフィーノの一般的なものから、新設計のバイパス・システムを採用したものへ変更。時と場合によって、ノイズレベルの制御が可能となる。
トランスミッションは8速デュアルクラッチATで、リアタイヤ側の低い位置にレイアウトされるトランスアクスル。SF90由来のユニットで、ポルトフィーノの7速よりレシオ幅が広い。
フェラーリ製のトルクベクタリング・システム、eデフは標準装備。サイドスリップ・コントロールは最新の6.0で、ブレーキを電子制御するフェラーリ・ダイナミック・エンハンサー(FDE)を搭載する。
ポルトフィーノの比ではない第一印象
磁気粘性流体を用いたアダプティブダンパーはオプション。試乗車には装備されていた。たとえアダプティブ・ダンパーがなくても、フェラーリ最新の技術は不足なく盛り込まれているといえるだろう。
仕様の確認はこれくらいにして、走り出してみよう。第一印象の良さは、ポルトフィーノや前身のカリフォルニアの比ではない。タイヤが転がり始めてすぐ、低い速度域から感じ取れる。
今どきのフェラーリらしく、ステアリングはダイレクト。切り始めてすぐに、反応が返ってくる。正直にいうと、慣れるまでに少しの時間が必要だ。
コーナーへ速めのペースで侵入すると、ボディロール量はポルトフィーノより明らかに小さい。かなり自然で機敏だ。クイックなステアリングに見合うだけの、シャシーレスポンスが与えられている。操縦性は、調和が取れていながらも、鋭い。
前輪にかかる負荷を直感的に判断し、高めていける。不安感なく、ローマを操れる。
乗り心地は、引き締められていながらも、ポルトフィーノより穏やか。フェラーリによれば、フロントのサスペンション・スプリングはポルトフィーノと同じもので、リアは10%柔らかいという。
トレッド値が広げられているから、相対的なスプリングレートは、さらに柔らかいことになる。フロント側も。
ポルトフィーノより重心高が低く軽量だから、同じ速度で生じるボディロール自体も抑えられる。結果、クルマとしてより良好な基礎構成になり、しなやかで、優れた操縦性へとつながる。乗り心地も良くなるというわけ。