【先取りの高性能ワゴンと高級SUV】レンジローバーとトライアンフ2.5 PI 後編

公開 : 2020.08.30 07:20  更新 : 2020.12.08 08:35

初代レンジローバーと、トライアンフ2.5 PI エステートという英国製ワゴン。1970年初頭の英国から登場した2台は、現在の高性能エステートや高級SUVを先取りしたモデルといえました。英国編集部が振り返ります。

サルーンに匹敵する洗練度のレンジローバー

text:Martin Buckley(マーティン・バックリー)
photo:James Mann(ジェームズ・マン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
上品で優雅な雰囲気を漂わせる、初代レンジローバー。存在感も大きい。トライアンフより全長は短く、幅が広い。13インチのホイールを履くトライアンフは、幅が狭く小柄に見える。

レンジローバーはトライアンフより高価だったが、加速は遅いし、燃費は5.0km/Lと悪い。最高速度は160km/hほど。ガソリンが適切に噴射される2.5 PIの燃費は、8.9km/L以上と、だいぶ良い。

ランドローバー・レンジローバー(初代 3.5L/1970年〜1988年)
ランドローバー・レンジローバー(初代 3.5L/1970年〜1988年)

車高が高く、独立したシャシーに堅牢なドライブトレインを有するレンジローバー。トライアンフ2.5 PIより450kg以上も重いから、大食漢でも仕方ない。

レンジローバーとほぼ同じ馬力でも、トライアンフ2.5 PIは185km/hの速度へ到達できる。2.5 PIが100km/h近くまで加速する時間で、レンジローバーはが届くのは80km/hほど。

実際に走らせてみると、直線加速での力感には顕著な差は感じない。どちらも低回転域からたくましいトルクと、滑らかなフィーリングが得られる。

レンジローバーが積む3.5LのV8エンジンは、アイドリング時はほとんど無音。発進加速はスマートで、変速のたびにしっかり速度を増していく。

トランスミッションは複雑で、パーマネント式の四輪駆動だから、ドライブトレインからのメカノイズが大きい。巨体が動く力強い印象が、走りの特徴の中心にある。

レンジローバーは、高速道路を1日中、楽しく走り続けられる。新車並みのコンディションだから、サルーンに匹敵する洗練度を備えていたことを実感できる。悪路走破性を高める柔らかいコイルスプリングが、しなやかな乗り心地でボディを支える。

荷室にもウッドが張られた豪華なワゴン

高い視線と大きな窓が、レンジローバーのシンプルなインテリアに明るい雰囲気を与える。クラシックなダッシュボードに大きなトランスミッション・トンネル、シートベルトと一体のシートが印象的だ。

ベルベット風のアンブラ生地が張られたトライアンフ2.5 PIの車内は、対象的に暗い。ドアはどしりと閉まり、よりソリッドな質感がある。

トライアンフ2.5 PIエステート(MkII/1969年〜1975年)
トライアンフ2.5 PIエステート(MkII/1969年〜1975年)

ステーションワゴンで、ウッドの化粧パネルが荷室まで延びる例は見たことがない。毛足の長いカーペットも、豪華さを引き立てている。ウエストラインは低く、後席は広々とした足元空間が幅の狭さを補完する。

MkIIはダッシュボードのデザインも新しい。曲面を描くメーターパネルに、整然と丸いメーターが並ぶ。ステアリングホイールはレザー巻きで美しく、調整も可能。ステアリングコラムには、主要な機能がまとめられている。

シートは肉厚で、エグゼクティブ・ワゴンと呼ぶのに相応しい。ステアリングホイールとシフトノブ、ペダル類の配置もよく考えられている。

燃料噴射式だが、トライアンフ2.5 PIには手動チョークが付いているのが面白い。ワイパー用モーターを流用したポンプで加圧されるルーカス製のインジェクションは、起源が軍用モデルだ。

フロントヒンジのボンネットを開けると、直列6気筒のプッシュロッド・エンジンが見える。スロットルボディとインジェクターが備わり、コントロールユニットが必要なだけの混合気を適切に供給する。

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