【なぜ選ばれる?】コロナ禍でも販売増 フィアット/ルノーが日本で好調 8月の輸入車登録台数レポート

公開 : 2020.09.09 06:50  更新 : 2021.10.11 09:35

8月のインポートカーの登録台数ランキングです。新型コロナウイルス感染症の影響で、多くのメーカーは前年比減。しかし、フィアット/ルノーはプラスに。なぜ、売れているのでしょう? チンクエチェントとトゥインゴに注目。

前年比マイナスが目立つなか、プラスの2社に注目

text:Kazuhide Ueno(上野和秀)

海外メーカーの乗用車の販売台数は、新型コロナウイルス感染症による影響で低迷していたが、感染拡大が収まりつつあることから次第に回復してきた。

8月は1万8039台の登録を数え、前年同月比で84.3%まで盛り返している(JAIA調べ、速報値)。

多くの海外メーカーが、前年比マイナスの登録を記録した8月。フィアット、ルノー、ポルシェはプラスという好結果。伊・仏の2社に注目してみよう。
多くの海外メーカーが、前年比マイナスの登録を記録した8月。フィアットルノーポルシェはプラスという好結果。伊・仏の2社に注目してみよう。

今年に入ってからの登録台数の推移を見ると、その流れは明確だ。

コロナ以前の1月は前年同月比96.7%だったものが、2月になると90.8%、3月には86.4%、4月は62.8%、そして5月になると53.4%と大幅に落ち込んでしまう。

しかし止まっていた各メーカーの工場再開と感染拡大が一段落したこともあり、6月は67.7%まで盛り返し、7月は82.1%、そして8月になると84.3%まで復活してきた。

ウイズ・コロナ時代となって新たな生活様式に変わり、クルマに対する需要が戻ってきた。登録台数の上位を占めるドイツ勢を中心に、依然として昨年比マイナスのメーカーがほとんどだが、回復の流れにはある。

それを裏付けるように、コロナ禍で経済の先行きが見えないなか、8月に前年比100%超えという好記録を残した量産車ブランドがある。

フィアットとルノーである。

根強いチンク人気 通勤需要も

前年の8月と比べてプラスになったメーカーの1つ目は、フィアットだ。

2020年の8月は432台が登録され、前年同月比で119.3%と大躍進を遂げている。7月の110.4%からより積み増しされた形だ。

7・8月に、前年比プラスを記録したフィアット。コンパクトカーの500(チンクエチェント)が牽引役。コロナ禍の通勤需要やローンプランが後押しした。
7・8月に、前年比プラスを記録したフィアット。コンパクトカーの500(チンクエチェント)が牽引役。コロナ禍の通勤需要やローンプランが後押しした。

8月の好調についてフィアット日本法人は、「新型コロナウイルスの感染拡大によってクルマを利用する人が増え、とくにクルマ通勤の多い地方でフィアット500(チンクエチェント)が伸びた」と説明。

また、「8月からスタートした初回の支払いを5か月先にできる『スキップローン』が、購入を検討する顧客のニーズと合致した」と分析している。

今の世の中のスモールカー人気の状況に、500と500Xの体制とローンプランの導入がマッチしたようだ。

次なるプラスのメイクスはルノーで、8月は470台を記録して10位の座を獲得。

前年同月比は109.0%とがんばっている。

ルノーも、小型車のトゥインゴが増

ルノー日本法人の関係者は、モデルごとの動向を注視していた。

「トゥインゴが、3月以降に限定車、特別仕様車をほぼ毎月のように発売し、それらが好調で4月以降は前年同月の販売台数を上回っている」

同じくコンパクトカーのルノー・トゥインゴが、4月以降に前年同月の販売台数を上回っている。8月のインポートカー全体の動向を価格帯別で見ても、400万円未満のクラスの回復ぶりは際立つ。
同じくコンパクトカーのルノー・トゥインゴが、4月以降に前年同月の販売台数を上回っている。8月のインポートカー全体の動向を価格帯別で見ても、400万円未満のクラスの回復ぶりは際立つ。

カングーは、3月までは前年並みで、4・5月は前年同月を下回った。しかし、緊急事態宣言明け以降は限定車の発売もあり、販売が回復している」

個性的なそれぞれのモデルの魅力が、特別仕様車の登場と小型車優位の流れに乗り、前年比プラスに転じたといえよう。

コロナ禍により他人に接せずに移動することができるクルマが見直され、取り回しが良く値段的にも手頃な小型車が注目される流れになった。

顧客心理でどうせ買うのなら存在感があって、ちょっと背伸びすれば手が届く輸入車が選ばれたと考える。

事実8月の登録実績でも、400万円未満の価格帯が前年同月比で93.1%と好調だ。400万円以上1000万円未満のカテゴリーは、同76.4%と低迷していることからも、時代は小型車にシフトしていることが見えてこよう。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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