【国産スポーツカーの象徴】日産フェアレディZ、なぜ「原点回帰」と言わない? マツダ・ロードスターと根本的な違い

公開 : 2020.09.18 05:50

発表前から「初代への原点回帰か?」と噂になっていた、日産の次期「フェアレディZ」。2020年9月16日に「ほぼ量産」の状態がオンラインで世界初公開されたのですが、関係者は原点回帰とは称しません。なぜでしょう?

新型日産Zの意匠 原点回帰ではない

text:Kenji Momota(桃田健史)

日本時間2020年9月16日午前にオンラインで世界初公開された、日産フェアレディZプロトタイプ。2021年発売の次期「フェアレディZ」のほぼ量産状態で登場した。

2020年5月以降、日産は同車のシルエットやフロントライト周りの画像を公開してきたが、その際、メディアやユーザーの間では「原点回帰」という表現が数多く使われた。

日産フェアレディZプロトタイプ(上)/マツダ・ロードスター(下)
日産フェアレディZプロトタイプ(上)/マツダロードスター(下)    日産/マツダ

1969年発売の初代(S30)の雰囲気があるからだ。

ところが、フェアレディZコンセプトのオンライン記者会見では原点回帰という言葉は見当たらなかった。

日産のグローバルデザイン担当専務執行役員のアルフォンソ・アルバイサ氏は「レトロモダン」という表現を使い、シルエットの中にS30のデザインテイストを盛り込んだことを認めている。

だが、けっして原点回帰という表現は使わない。

ユーザーとの意見交換で登壇した、グローバルデザイン本部エグゼクティブ・デザイン・ダイレクターの田井悟氏も、また次期フェアレディZの商品企画を総括するチーフ・プロダクト・スペシャリストの田村宏志氏も、原点回帰とは言っていない。

田村氏は「オマージュ」という表現をしたが、その言葉の扱いついて、かなり気を遣っているように見えた。

なぜ、日産関係者は原点回帰という言葉を使わないのか?

新型Z、マツダ・ロードスターと違う

スポーツカーの分野で原点回帰と聞いて、多くのユーザーが頭に思い浮かべるのは、マツダ「ロードスター」(4代目ND)ではないだろうか。

筆者は2015年1日、スペインのバルセロナで開催されたNDの国際試乗会に参加したが、宿泊先から試乗会場まで初代NAの試乗が用意されていた。

マツダ・ロードスターNA型(左)/NB型(右)
マツダ・ロードスターNA型(左)/NB型(右)    マツダ

マツダ関係者は皆、NDを「NAへの原点回帰」と表現した。

NDの企画、設計、実験、さらに製造に関わるマツダ社員たちが、実際にNAに何度も試乗し「ロードスターの原点」を身体全体に浸み込ませて、皆が目指す方向に対する共通意識を持ってND完成を目指した。

その上で、デザインについては、NDはNAをモチーフ、またはオマージュしていない。

マツダが目指したのは、NDを操る時にNAに通じる「マツダのモノづくりスピリット」を感じてもらうことであり、それを実現するための結果として、エクステリアとインテリアのデザインがあるという考え方だ。

リアライトなどに「ロードスターの気配」は残したものの、クルマ全体のシルエットでNA、さらにはNB、NCを意識していない。

一方で、フェアレディZコンセプトの場合、デザインの重要性が高い上で、S30を筆頭に、32Zのリア周りを意識した上で、歴代Zのすべてを盛り込もうとしている。

ロードスターとは商品企画の考え方が大きく違う印象がある。

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