【寿命が縮まる?】アイドリングストップ エンジンへの影響、メリットは
公開 : 2020.09.21 20:50
アイドリングストップは燃費改善と排出ガス削減のため、多くのクルマに搭載されています。しかし、エンジンの寿命や耐久性に影響を与える可能性もあります。その仕組みやメリット・デメリットをご紹介します。
アイドリングストップとは?
アイドリングストップ機能は多少なりとも燃費に貢献しているはずだが、長期的にはエンジンの耐久性に影響はないのだろうか?
アイドリングストップ(ストップスタート)とは、燃料の消費量と排出ガスを削減するため、クルマが静止しているときにエンジンを停止させるシステムのことである。
ハイブリッド車では、低速で巡航しているときや勾配を下っているとき、また減速しているときにもエンジンを停止させることがある。ブレーキを離したり、発進や加速をしたりするときに再始動する。
仕組みとしては、停車時やギアをニュートラルに入れたとき、または低負荷走行時にコンピューターが判断してエンジンへの燃料供給とスパークを停止する。ハイブリッド車の場合、エンジンが停止している間は電気モーターからトルクを供給できるが、一般的には平地や街中で速度を維持する程度だ。
クルマが動き出したり、ギアをドライブに入れたりするとイグニッションが始動する。こうした一連のプロセスは自動的に行われるが、ドライバーが任意に有効・無効を選択することができる。
従来の電動スターターモーターは、エンジンフライホイールの外側に取り付けられた大きな「リング」ギアと小さなピニオンギアを噛み合わせることで作動する。
最新のアイドリングストップ技術は、見た目こそほとんど変わらないものの、モーターはより強力になり、反応速度も向上している。多くの場合、大型の蓄電池を備えた高電圧の電気システムに支えられている。
中には「タンデム・ソレノイド」を意味する「TS」と呼ばれる始動装置もあり、エンジンが停止しようとした瞬間に再び加速するような場合に、よりスムーズに対処できるように設計されている。
こうした場面は、ドライバーが停止しようと決めていたにも関わらず、何らかの理由(交通状況の変化など)で気が変わってしまったときなどに訪れる。
その時、エンジンの動きとギアが合わずにノッキングが生じる可能性がある。それを避けるために1つのソレノイドがスターターモーターを始動させ、もう一方のソレノイドがギアを噛み合わせる前にエンジンと速度を同期させる。
アイドリングストップの欠点
耐久性と寿命の観点で言えば、スターターギア自体に関する対策は講じられているはずだが、ストップ・スタートの回数が多いほどエンジンの摩耗が激しくなる。
部品メーカーのフェデラル・モーグル社でベアリング設計を担当するゲルハルト・アーノルドは、次のように語っている。
「アイドリングストップ機能のない普通のクルマは、その生涯で最大5万回のストップ・スタートを繰り返すと予想されます」
「しかし、クルマが停止するたびに自動でアイドリングストップが作動すると、この数字は劇的に上昇し、50万回ものストップ・スタートを繰り返すことになります」
この差は大きく、エンジンのベアリングの耐久性と寿命に大きな課題をもたらす。
エンジンの基本部品であり、最も重い部品の1つでもあるのがクランクシャフトだ。
クランクシャフトは、その長さに沿って「プレーン」なメインベアリング(ボールベアリングもローラーもなく、ただの滑らかなメタル)を使用しながら、精密に研磨された多数のジャーナルによって回転する。
エンジンが回転しているとき、クランクシャフトとメインベアリングの表面は接触せず、極薄のオイルの膜によって分離されている。このオイルは回転するクランクシャフトの作用によってベアリング表面の周りに送り込まれる。
このプロセスは「流体潤滑」と呼ばれているが、エンジンが停止すると、クランクはベアリングの上に沈み込み、2つの金属表面が接触する。
エンジンが始動すると、2つの表面が油膜によって分離する前に「境界潤滑状態」と呼ばれるポイントがある。回転するクランクシャフトと、ベアリング表面の間に金属同士の接触がある状態だ。
この状態が摩耗の原因となる。つまり、アイドリングストップ搭載車では、生涯に累計50万回の境界潤滑条件(金属同士の接触)が存在する可能性があるのだ。通常のベアリングはその前に摩耗してしまう。