【待ちに待った最新型】トヨタGRスープラ(1)長期テスト 新ヒーローの誕生か

公開 : 2020.10.03 11:50  更新 : 2021.08.05 08:08

長い開発期間を経て登場したトヨタ・スープラ。充分な荷室と不足ないパワーを備えていますが、今後に続く相応しい性格付けは与えられているのでしょうか。スポーツカーとしての本性を、長期テストで確認していきます。

初回 英国でニュースになった速度違反

text:Richard Lane(リチャード・レーン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
モデル名を聞いて、連想する言葉はなんだろう。996型ポルシェ911のGT2といえば、側道の生け垣?ロータス・エリーゼといえば、ヘッドガスケット?

スープラと聞いたのなら。少し意地悪な読者なら、BMWと答えるかも。しかし数年前なら、チューニングといった言葉が紐付いたはず。4代目、A80型スープラの時代では。

トヨタGRスープラ・プロ(英国仕様)
トヨタGRスープラ・プロ(英国仕様)

トヨタ・スープラが誕生したのは1978年。セリカへ直列6気筒エンジンを搭載するため、フロントノーズを伸ばしたのが始まりだった。

3代目のA70型は、グループAカテゴリーの世界ラリーで戦っていたが、スープラの名前を一躍有名にしたのは、A80型だろう。ふくよかなカーブを描くボディが、日本のアフターマーケット・チューニングを、鮮明に映し出した。

その当時は、想像ができれば、大体は実現できた。充分な現金さえあれば。

A80スープラの絶頂期を迎える、きっかけの1台が誕生したのは1999年。日本ではなく、英国ピーターバラ近郊が舞台だった。

金色に塗られた、日本のトップ・シークレット社が生み出したスープラには、5.0LのV型12気筒エンジンが積まれていた。最高出力は943psだったらしい。代表のスモーキー永田は、高速道路のA1号線でスープラを走らせた。

午前4時、318km/hという最高速度を記録。もちろん警察に見つかり、彼は逮捕され、その日の午後には裁判が開廷。運転免許は剥奪された。英国のマスコミは、この話題を大きく取り上げた。

ワイルド・スピードが高めた世界的知名度

自動車雑誌、マックスパワーでは新しいヒーローの登場を歓迎。タブロイド紙は、悪者として記事にした。しかし、その中心にあったのは、間違いなくA80型のスープラだった。

彼の走りは、英国で犯された速度違反として、いまも最速のまま。一般道での全開走行としては、桁外れだった。

トヨタGRスープラ・プロ(英国仕様)
トヨタGRスープラ・プロ(英国仕様)

その頃の日本では、カストロールがスポンサーに付いたトムス・スープラが、スーパーGTクラスで活躍。速度違反のニュースを発端に、トムス・スープラは世界でも最も有名なレーシングカーの1台になった。

続く2001年、4代目トヨタ・スープラはハリウッド映画、ワイルド・スピード(ファスト・アンド・フューリアス)に登場。派手なレースシーンでメガヒットを飛ばす。

ユーチューブにも掲載されている名シーンが、ポールウォーカー演じるブライアン・オコナーが、スープラでフェラーリF355を追い抜くシーン。イタリア製のスーパーカーが負けるシーンは、いま見てもなかなか痛快だ。

ワイルド・スピードを見れば、スープラが好きになる。違法な改造パーツの物語が、伝説を作り上げた。

ところが時代は変わった。トヨタは、ハイパフォーマンス・クーペに背を向けてしまう。作り方を忘れたかのように。

そのかわり与えられたのは、小さすぎるMR-Sと、前輪駆動のセリカ。近年になってGT 86も登場するが、スープラに迫るモデルではなかった。

そして2018年、遂に後継モデルが発表。われわれの期待が高まらないわけがない。

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