【元祖スーパーSUV】 ランボルギーニLM002 カウンタックのV12に四輪駆動 前編
公開 : 2020.10.11 07:20 更新 : 2020.12.08 08:38
これまでのランボルギーニで、最もエキサイティングで必要とされなかったモデル。それこそ、魅惑的ながら運転も維持も難しいLM002です。スーパーSUVの元祖ともいえそうな貴重なワイルド・ブルを、ご紹介しましょう。
最も過激ながら、必要とされなかったモデル
スーパーSUVと呼ばれる高性能オフローダーほど、自動車業界への影響力が大きい新ジャンルはないだろう。クルマの話題より投資の話題を好む、富裕層が乗る学校への送り迎え用のクルマだ。
ポルシェ・カイエンは、シュツットガルトの稼ぎ頭となった。ベントレーからはベンテイガが登場し、ロールス・ロイスからはカリナンが、アストン マーティンはDBXをリリースした。ランボルギーニも、ウルスでこの市場に乗り込んでいる。
ランボルギーニ・ウルスのウェッジシェイプなボディの内側には、アウディQ7と共有の構造が隠れている。オフローダーのカタチをしたスーパーカーとして期待するほど、実はエキゾチックではない。
そもそもランボルギーニの原点は、実用的な働くクルマだったことを考えると、スーパーSUVのリリースにもうなずける。トラクターの製造でスタートしたことは、ご存知の読者も多いだろう。
そんなブランドの歴史を振り返えると、最も過激ながら、必要とされなかったモデルが含まれている。古いモデルの魅力には、欠くことのないランボルギーニ。その中でもLM002ほど、今の時代に注目したいと思えるクルマはない。
スーパーカーを生み出すブランドが、オフローダーの製造に踏み出した経緯は、1970年代半ばまでさかのぼる。きっかけはアメリカの企業、モビリティ・テクノロジー・インターナショナル(MTI)社との共同プロジェクトだった。
ランボルギーニ・ミリタリア
アメリカ政府が求めた、全地形対応型の車両製造に対する権利を狙った、数少ない企業の1つだ。ジープに変わる、新しいモデルで応えようとした。
MTIのアイデアは、カリフォルニアにあったランボルギーニの拠点で具現化された。ワイルドな4シーターのオフローダーで、リアには5.9Lのクライスラー製V8エンジンが搭載された。後に、チーターと呼ばれるモデルだ。
しかし、落札には至らず。ランボルギーニも自動車メーカーだから、開発費用の損失を減らす努力に迫られる。特に、当時の不安定な財政状態を考えれば、当然だろう。
そこでランボルギーニが取った方策は、チーターを量産すること。裕福な若者やアラブの族長などに、経営のバランスシートを部分的に改善してもらおうと考えた。
ジュネーブ・モーターショーで、チーターが発表されてから4年後。フランス人投資家のパトリック・ミムランの資金援助を受け、1981年のスイスにLM001が姿を表した。LMは、ランボルギーニ・ミリタリアの頭文字から来ている。
LM001では、V8エンジンはAMC製へスイッチ。チーターと同じくリアエンジン・レイアウトを採用し、加速やオフロード走行では、不安定なハンドリングが課題となっていた。結果的に、1台しか作られていない。
1年後、ランボルギーニはジュネーブ・モーターショーへ、新しいプロトタイプを用意する。それまでと最大の違いは、エンジンがフロントに搭載されていたこと。しかもランボルギーニ製のV型12気筒が選ばれた。
プロトタイプの名前には、Aが追加され、LMAを名乗った。