【スペシャリティカーになれる?】マツダMX-30試乗 ピリッとするには、もうひと磨きの余地あり マイルドハイブリッドの評価は?

公開 : 2020.10.19 11:20  更新 : 2021.10.09 23:31

「マツダMX-30」のガソリン・マイルドHVに試乗。観音開きドアをクロスオーバーSUVに持ち込み、競合と争います。後席の乗降性、内装、2WD/4WDの走りをレポートします。試乗車は100周年仕様です。

まずはデザイン勝ち 鋭いジャブ

text:Kazuhiro Nanyo(南陽一浩)
photo:Masanobu Ikenohira(池之平昌信)

デザイン・スタディの段階から期待値の高かったマツダMX-30が、公道でヴェールを脱いだ。10月某日、川崎を拠点にAWD版とFFの2WD版、それぞれを試乗する機会を得たのだ。

いずれも「e-SKYACTIV G」というパワートレインで、2LのスカイアクティブGに「Mハイブリッド」が組み合わされている。マツダ独自かつマイルドハイブリッドの「M」だと思えば覚えやすい。

マツダMX-30 100周年特別記念車(2WD/セラミックメタリック×マローンルージュメタリック:2トーン)
マツダMX-30 100周年特別記念車(2WD/セラミックメタリック×マローンルージュメタリック:2トーン)    池之平昌信

ISG(一体型スターター・ジェネレーター・モーター)と小型リチウムイオン・バッテリーにコンバーター、回生機能付きバイワイヤブレーキというシステム構成自体は、欧州の48Vマイルドハイブリッドに似るが、マツダ方式は24Vとなる。

まず内外装やデザインといった目につくところだが、コンセプトカー同様に観音開きとなる前後ドアを左右両側に採用してきた。RX-8という先達がある以上、マツダが「フリースタイルドア」と呼ぶ観音開きはもはや自家薬籠中のものだが、SUVクロスオーバーというジャンルに用いた点が新しいし、冴えていると思う。

コンパクトSUVやクロスオーバーは昨今クラスを問わず群雄割拠の飽和状態である以上、観音開きドアの意外性と、シンプルな面構成でも「らしさ」を見せた「魂動」デザインの新境地は、スペシャリティカーとしてアタマひとつ抜け出た存在と見える。

そもそも後席から乗ってみたくなるクルマも珍しい。

インテリアの質感は上々なのだが…

通常の後席のように、踏み込んで下がるという「スイッチバック」をしなくて済む分、観音開きの乗降性は悪くない。

前席ドアを開けないと後席ドアが開かず、腰を下ろすと自分で前席ドアを閉められない状況は生まれるが、視線や会話といったコミュニケーションを促す仕組みと解釈できなくもない。何より、後席にもソフトなエルボーパッドが張られている点は評価できる。

マツダMX-30 100周年特別記念車(2WD)の後席内装
マツダMX-30 100周年特別記念車(2WD)の後席内装    池之平昌信

前席に視線を移しても、静的質感の高さは申し分ない。AWDの方はベーシックパッケージだったが、リサイクルファブリックというシート座面と背面のヘリンボーンは日本車離れしたシックさだし、ペットボトルから再生されたというウールのような空気感素材がほっこりとドア上部を覆う。

センターコンソール手元にはマツダの前身、東洋コルク工業からのヘリテージ素材だというコルクが張られ、視覚的に素材感リッチな内装の一般好感度は高そうだ。

機能的で水平基調のダッシュボードも好ましいが、少し落ち着かないことに気づく。その原因を色々考えたが、ダッシュボードの分割線上にエアコン吹出し口を配する処理は、991世代のポルシェ似。

フローティングコンソールはひと世代前のボルボでお馴染みの手法で、アッパーディスプレイとロアタッチパネルの感じはアウディA6ランドローバーっぽくもある。

記事に関わった人々

  • 南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。

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