【2020年で一番ドライビング・ファン】マツダMX-5(ロードスター) 純粋さを失わない 英国の評価
公開 : 2020.12.26 05:45
オープン・2シータースポーツのロードスター。手頃な価格で、身近にクルマの楽しさを味わえる貴重な1台です。ロードスター以上に安価にドライビングファンを楽しめるクルマはない、とすら英国編集部は評価します。
軽量でコンパクトなFRに、控えめなパワー
手頃な高性能モデルといえば、近年ではホットハッチが主流。しかしその中に、マツダMX-5(ロードスター)並みにドライバーとの一体感を味わえるモデルは、存在しない。
ホットハッチは、ボディサイズの拡大が止まらない。一方でロードスターは、1989年の初代から、コンパクトなサイズを維持している。むしろ現行型は、初代より全長が短いほど。絶対的な速度ではなく、ハンドリングの純粋さを優先している結果だ。
日常的に乗りやすいホットハッチとは違い、リアシートはないし、充分な大きさの荷室もない。そのかわり小さいボディは、道を選ばず運転を楽しめる。
4代目でもエンジンは自然吸気を維持し、馬力任せの走りとは一線を画す。ややパワフルな2.0Lモデルも登場したが、それでも英国の制限速度を守りながら、エンジンをしっかり回しきれる。
1.5Lユニットの最高出力は、控えめな129ps。シフトアップするたびに、7500rpmのレッドラインまで引っ張りたいと思わせてくれる。こんなモダン・スポーツカーは、そう多くはない。
ドライビング体験は、オールドスクール。好感触なMTを操り、アクセルペダルを踏んだだけのパワーが、リアタイヤに伝わる。その強い一体感を、嫌いなドライバーはいないだろう。
軽量で低重心、50:50の重量配分が、レスポンシブなシャシーに仕上げている。グリップ限界も比較的低く、安全マージンを保って、運転に没頭できる。
高価格帯ライバルに並ぶドライビング・ファン
ドライバー重視のコクピットは、マツダが人馬一体を掲げるデザインを反映。見やすいアナログ・メーターや3ペダルのMTと、スマートフォン連携機能やクルーズコントロールなど、現代的な技術との自然な融合も見事だ。
数秒でソフトトップのルーフを開けば、自然の風を感じた穏やかなクルージングにも浸れる。動的性能の数値的な高さや、実用性を超えた魅力が存在する。
マツダ・ロードスターというクルマは、発売当初からそのアプローチがブレていない。それが、モデルとしての長寿命にも反映しているのだろう。
ロータスやケーターハム、ポルシェなども、優れたドライビング・ファンを得られる。しかし、はるかに多額の予算が必要。ドライバーが得られる充足感は、そんな高価格帯のライバルに並ぶ。英国編集部がマツダ・ロードスターを選ぶのは、当然といえる内容なのだ。
審査員コメント
Steve Cropley(スティーブ・クロップリー)
マツダ・ロードスターの素晴らしい点は、価格が5倍も違うスポーツカーと、ドライビング・ファンを比較できるところ。それだけの内容を備えている。
資金に余裕があるドライバーでも1台分の駐車場しかない場合、メルセデス・ベンツSLではなくマツダ・ロードスターを買う、という選択も成り立つほど。
ロードスターで評価すべきは、4代目への進化の過程で純粋さを失わなかったこと。素晴らしい偉業だといえるだろう。