【M235iやAMG A35を迎撃】新型 アウディS3サルーンへ試乗 親近感な高性能 前編
公開 : 2020.11.07 10:20
BMWやメルセデスAMGの対抗モデルに立ち向かうべく、リニューアルしたアウディの高性能4ドア・コンパクト、S3サルーン。ハード面での変更は限定的なものの、システム更新で競争力を高めています。英国で評価しました。
A3の備える実用性や扱いやすさはそのまま
幅広いモデル・ラインナップのそれぞれに、高性能仕様を準備するアウディ。その中で見れば、速さやテクノロジー、価格といった点で、最新のS3は控えめな部類に入る。
一方で、ボディサイズや日常的な乗りやすさ、品質などを俯瞰して見ると、S3の訴求力はかなり高い。筆者は、完璧と呼びたいバランスに仕上がっていると思う。
ベースとなる標準のA3が備える、優れた実用性や扱いやすさはそのまま。それでいて、英国の道路環境で必要以上の、秀でた動的性能が与えられている。素晴らしいパッケージだ。
アウディS3の歴史は、意外にもそれほど長くはない。初代の登場から、まだ20年ほどしか経っていない。1999年に登場したS3は、四輪駆動の高性能ハッチバックを、民主化する重要な役目を果たした。
S3が姿を現す前まで、四輪駆のコンパクト・モデルは珍しい存在だった。ランチア・デルタ・インテグラーレやスバル・インプレッサ、フォード・エスコトート・コスワースなど、どちらかといえばラリーマシンとのつながりが色濃い、特別な存在だったといえる。
しかし、アウディS3を取り巻く環境は変化した。S3としても、試乗車のように4ドアサルーンが選べるようになっている。ライバルが増える中で、最新モデルも開拓者としての優位性は保てているのだろうか。
ハードウエアの変更は限定的
新しいS3を、詳しく見ていこう。技術的なレシピは、先代と大きくは違わない。エンジンは、EA888型と呼ばれる、おなじみの2.0L直列4気筒ガソリンターボ。
排気ガス対策が新たに施され、最高出力310ps、最大トルク40.7kg-mを発揮する。トランスミッションは、7速デュアルクラッチATだ。
ベースは、2020年に登場した最新のアウディA3。応用幅の広い、フォルクスワーゲン・グループのMQBプラットフォームを土台としている。
サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式、リアがマルチリンク式となり、標準のA3より車高は15mm低い。ハルデックス・カップリングと呼ばれる多板クラッチを用いた四輪駆動、クワトロで、ブレーキ制御によるトルクベクタリング機能が付く。
先代から、ハードウエア上の大きな変更はないといえる。そのかわり、ソフトウェアをアップデートし、システムを煮詰め直している。
新しいS3では、はるかに高性能化されたコンピューターを採用し、システムを統合制御。運転支援システムも、先進的な内容になっている。
フォルクスワーゲン・ゴルフなどでは、インテリアの操作系をタッチモニターに集約。物理的なボタンは姿を消し、ミニマリストなデザインに変化している。しかしアウディではボタンが残され、やや従来的な雰囲気が残る。
AUTOCARの評価としては、この方向性は正しいと思う。確かにモニターは表示が明るく鮮明で、反応は良いかもしれない。でもエアコンなど、わざわざモニターを介さずに、ボタンに触れた方が手っ取り早い操作は少なくない。