【コロナが成長を促した?】中国の自動車産業、急成長の理由 世界を飲み込む巨額の富

公開 : 2020.11.28 19:05

中国の自動車産業が急成長を遂げています。ロックダウンからの驚異的な景気回復を背景に、中国の自動車メーカーが欧米ブランドを買収する可能性も高まっています。その成長を支える要因や影響力について検証します。

コロナを乗り越え急成長する中国経済

text:Jim Holder(ジム・ホルダー)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

先月末、モンゴルから中国に対し4000頭の羊が贈られた。モンゴルのハルトマーギーン・バトトルガ大統領が、新型コロナウイルス感染症と闘う中国を支援するために贈呈すると発表した3万頭の羊の第1弾である。

パンデミックの震源地となった中国は今、危機的状況からの脱却を祝う立場にある。驚くべきことではあるが、中国は感染症に対処し、終息に成功したモデルとなっている。感染や死亡率の統計については激しい議論が交わされているが、中国経済が再び急上昇していることは間違いない。

多くの自動車ブランドに中国資本が流れ込んできている。
多くの自動車ブランドに中国資本が流れ込んできている。

上海に拠点を置く自動車コンサルタント会社オートモビリティのビル・ルッソ最高経営責任者(CEO)は、「この好転には目を見張るものがある」と語る。

「ロックダウンが解除された瞬間、動きに変化が見られました。パンデミック前のレベルを超え、何か別のものに変わっています」

専門家たちはその理由を探り、中国がなぜこんなに早くこれほどの成果を上げたのか、その手掛かりを探している。世界中の政府は、中国が青写真を提供してくれることを期待している。

危機がピークに達した後の当初数か月間は、景気回復には問題があるように見えた。追跡調査、検査、検疫が世間のムードを抑え、個人消費を沈静化させた。しかし、こうした行動がウイルスの拡散を抑えたことで、いつの間にか、数日、数週間、数か月と、新たな感染者の報告は聞かれなくなっていった。

それから支出が始まった。もちろん欧州諸国も同様の経験をしており、最初のロックダウンを乗り越えた夏には消費が急増した。しかし、今ではほとんどの国で、再度の規制によって抑え込まれている。

中国には、特に大都市以外の中産階級がまだ存在していることも救いとなっている。政府の補助金やインセンティブも十分に出されている。ここ数か月、産業支出は前年比約7%増、個人消費支出は4%増となっている。

2020年1~3月の3か月間で経済が6.8%縮小しているにもかかわらず、中国は現在、前年比で成長を記録した唯一の主要経済国になると予測されている。その成長率は2%とされているが、一方の米国は4%減、英国は10%縮小すると予測されている。

成長を支える巨大な自動車産業

成長の中心となっているのが自動車産業であり、その好転ぶりは目を見張るものがある。10月の中国市場は、新車登録台数が6か月連続で前年同月比で増加した。世界最大の自動車市場として過去21か月間、ほぼ2年間にわたって低迷していたことを考えれば、驚くべき結果である。

今後も、さまざまな景気刺激策の実施・撤回により波乱が予想されるが、総登録台数は2022年までに2019年を楽に超えるだろうと予測されている。

シャオペンG3
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「成長は新車販売にとどまらない」とルッソは語る。

「新車販売の数も印象的ですが、商用車、中古車、そして電動バイクなどのマイクロモビリティを含めた市場全体の成長が見られます」

「公共交通機関の利用を避けたいという思いが原動力となっていますが、個人の移動手段を確保したいと望む人が増えているのです」

世界の自動車産業における中国の地位は強化され、多くの欧米企業が中国の富に本質的に結びついている。

中国の重要性は、例えばフォルクスワーゲン・グループの財務記録に顕著に表れている。グループ内の12ブランドは2020年第3四半期に32億ポンド(4416億円)の利益を計上。主にアウディポルシェに対する中国の旺盛な需要によって牽引されたものであるが、今年の上半期には12億ポンド(1656億円)の損失を出している。

この激動の年に、中国市場がフォルクスワーゲン・グループの総販売台数の40%以上、利益の30%以上を占めているのだ。

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