【992型をピュアにする7速MT】ポルシェ911カレラS マニュアルへ試乗 PDKより35kg軽量
公開 : 2020.12.02 10:25
最新の992型ポルシェ911カレラSに、コアファン待望の7速MTが登場。PDK版より車重は35kg軽量に仕上がり、ダイレクト感の強い変速フィールがドライビング体験の訴求力を強めると、英国編集部は評価します。
もくじ
ーMTのカレラSは最もピュアな992型
ー変速作業は喜びに変わる
ー911の一部になったような一体感
ーリアエンジンというレイアウトを味わう
ーMTを積む最後のポルシェ911になるのか
ーポルシェ911カレラS マニュアル(英国仕様)のスペック
MTのカレラSは最もピュアな992型
最新992世代のポルシェ911として、最速でも、最高級でもない。でもポルシェ製の7速MTを採用したカレラSは、最もピュアな992型だといって間違いないだろう。
足元のペダルは3枚。駆動輪は後ろの2本。わずかな軽量化も叶えている。911 GT3の登場が控えているが、それまでは最もドライバー・フォーカスな911と呼べる可能性は高い。ちなみにこのGT3、MTが載る保証はないらしい。
992型のポルシェ911にこれまで載っていたのは、PDKと呼ばれる8速デュアルクラッチAT。市場需要の大きさを優先させるカタチだったといえる。
MTへ強い支持が集まるのは、欧州と英国程度。マーケット規模を考えれば、採用しないという可能性すらあった。最終的にMT版の追加が決定したのは、北米市場のニーズにあったようだ。北米も合わせれば、MTが占める割合は約20%になる。
この7速MTだが、現在組み合わせられる911はカレラSのみ。後輪駆動と四輪駆動で選べる。8速PDKと比べると、35kgも軽量に仕上がっている点も特徴だろう。
さらにドライバーとしてうれしい情報が、MTならスポーツクロノ・パッケージが標準装備になること。油圧アクティブ・エンジンマウントと、専用のスポーツ・チューニングとなるアダプティブダンパーも付いてくる。
PDK版に採用される電子制御のLSDは、機械式LSDにスイッチ。トルクベクタリング機能は残る。最高出力は同じ450psだ。
変速作業は喜びに変わる
最近の高性能モデルでは一般的だが、MTを選ぶとATより加速は少し遅くなる。911でも同様で、7速MTの0-100km/h加速時間は、8速PDKの3.7秒に対し4.2秒。
燃費効率でいえば、MTの方が若干有利。PDKの燃費が9.5km/Lなのに対し、MTでは9.9km/Lへ若干伸びる。CO2の排出量も5g/km少なくなり、229g/kmとなっている。
価格はPDK版と同じで、MTを選んでも安くはならない。考え方としては、無料オプションといったところ。いずれにしても、ベーシックな911が10万ポンド(1350万円)もするという事実は、少々受け入れがたいけれど。
ドアを開くと、ハイテクな雰囲気が漂うインテリアデザインの中で、マニュアルのシフトレバーに違和感を覚える。ダッシュボードには、タッチセンサーと大きな液晶モニターが並ぶ。
トランスミッション・トンネルの真ん中、今までPDKのセレクターが付いていた部分に、レザーで覆われた丸いノブが付いている。手を伸ばすと、最小限の動作で済むように、適度な高さにレイアウトされていることがわかる。
気持ち良く変速するには、フルードを温める必要がある。懐かしい体験。冷たい状態では、やや引っかかりがあり、頼りない感触だ。
温度が一度上がってしまえば、変速作業は喜びに変わる。ショートストロークのシフトレバーが、滑らかに正確に動く。指先程度の軽い力で、6速まで気持ちよく選んでいける。