【未来の水素を一歩身近に】トヨタMIRAI(ミライ)プロトタイプへ試乗 FCEV普及の野心
公開 : 2020.12.09 15:25 更新 : 2022.11.01 08:42
英国にも上陸する、水素燃料電池搭載の量産モデル、トヨタMIRAI(ミライ)。先代より優れたパワートレインと上品なスタイリングを獲得し、燃料電池車(FCEV)の可能性を世界に問います。英国編集部がプロトタイプに試乗しました。
もくじ
ー2代目MIRAIの販売目標は初代の10倍
ー3本の水素タンクに182psのモーター
ー見た目も充分にアピールできるデザイン
ー水素燃料電池を自動車市場に問う
ートヨタMIRAII(ミライ) プロトタイプ(欧州仕様)のスペック
2代目MIRAIの販売目標は初代の10倍
トヨタが水素燃料電池を搭載するMIRAIに触れるとき、しばしばトラックや電車など大きな乗り物が出てくる。新しいMIRAIは1台の燃料電池モデルだが、その裏にはトヨタの野心が潜んでいる。
今回試乗したMIRAIは2代目。トヨタの燃料電池自動車(FCEV)としては、9番目に当たる。開発をスタートさせたのは1992年。公道認可を受けたのは、5番目以降からだ。
初代MIRAIは、2015年に発売された。約1万1000台が製造され、英国に輸入されたのは180台ほど。欧州本土では、829台がオーナーのもとへと渡った。
2代目MIRAIの販売目標は、その10倍。量産モデルとしては低い目標値だが、初代とは異なる意思があることは間違いないだろう。
一般的にバッテリーを搭載する純EV(BEV)の技術は、航続距離が短い小さなクルマに適合しやすい。バッテリーの重さと容量の制限で、まだ大きなクルマに適した技術ではない。
重い荷物を長距離運搬したり、優れない路面状態を走行する場合、燃料電池のメリットが見えてくる。水素の補充は短時間で済み、重たいバッテリーを積む必要もない。トヨタが考える燃料電池の分野は、そんな大型車両だ。
それが正しければ、水素ステーションなどのインフラも順調に整えられていくはず。実際、燃料電池の普及に向けて、トヨタは大規模な投資を中国で進めている。中国も国としてロードマップを立てて、燃料電池の普及を進めている。
水素は未来の燃料と、今までみなされてきた。そんな未来が、身近なものになるのかもしれない。今後の展開に期待したい。
3本の水素タンクに182psのモーター
少し話がずれたが、今回はトヨタMIRAIのプロトタイプ。ボディは大きい。
ベースとするプラットフォームは、レクサスLSのもの。水素と酸素を反応させて電気を生みだす燃料電池スタックは小型化されているが、システムとしてはまだ充分大きいから、ボディも大きい方が理にかなっている。
ボンネットの下にある燃料電池スタックのセルは、初代の370セルから330セルへ減らされている。一方で発電できる出力は155psから174psへと増加し、重量は50%も軽量化できているそうだ。
2代目MIRAIは後輪駆動。センタートンネル内とリアシートの下、荷室床下に、合計3本の水素タンクが収まっている。この3本に、合計5.6kgの高圧水素を蓄えることができる。
さらに重量45kgのバッファー用バッテリーも搭載。容量は1.24kWhあるという。これは回生エネルギーを蓄えるほか、スタックの能力以上のエネルギーが必要になった場合に電力をアシストし、182psの電気モーターを動かす。
MIRAIの車重は1950kgと、かなり重い。だがこのボディサイズと航続距離をバッテリーだけで叶えるなら、さらに車重は重くなる。トヨタが主張するMIRAIの航続距離は、WLTP値で643kmもある。
燃料電池の優れている点は、寒い冬でも航続距離が短くなりにくいこと。一晩中充電している必要もない。そのかわり、英国に現在ある水素ステーションの数は2桁だけ。その近所に住んでいるか、通勤途中にない限り、ちょっと心もとない。