【FCV(燃料電池車)】なぜ普及が進まない? 2代目トヨタ・ミライで3度目の正直 死の谷を越えるか?

公開 : 2020.12.10 18:56  更新 : 2021.01.28 18:23

トヨタの燃料電池車2代目「MIRAI(ミライ)」が量産。燃料電池車は「3度目の正直」として「死の谷」を越えるか。理論上の利便性は高いですが……。

2代目トヨタ・ミライ、ついに量産へ

text:Kenji Momota(桃田健史)

トヨタの燃料電池車2代目「MIRAI(ミライ)」が量産された。同車のコンセプトモデルを、メガウェブ(東京都江東区)で見たのが、いま(2020年12月)から14か月前のことだが、その際に「ほぼ量産」という状態だった。

この2代目で、燃料電池車は「3度目の正直」として「死の谷」を越えることができるのだろうか……。

新型トヨタ・ミライ(2代目)
新型トヨタ・ミライ(2代目)    森山俊一

「死の谷」とは、物事が普及する際に最初の需要が伸びずに下降し、そのまま谷間から抜け出せず、本格的な普及に結びつかない社会現象を指す言葉だ。

燃料電池車の歴史の中で、人類はこれまで2回の「死の谷」を経験している。

その2回それぞれを、世界各地の現場で取材をしてきた筆者としては、燃料電池車や充電インフラを含めて、水素社会の実現に向けて苦労してきた多くの皆さんの顔が浮かぶ。

今度こと普及への「3度目の正直」になって欲しいと願う。

振り返れば、トヨタの次世代車では、初代「プリウス」が90年代後半から2000年前半で、いわゆるエコカーのはしりとなったが、特殊なクルマというイメージから脱却できなかった。

それでも、プリウスは初代の時点で「死の谷」を越えており、その勢いが2代目の飛躍に繋がった。

一方、初代「ミライ」が「死の谷」を越えたと言い切るのは難しい状況だ。それだけに、2代目ミライに対するトヨタの期待は大きい。

小泉首相や安倍官房副長官も当時参加

燃料電池車の歩みを見るため、さらに時計の針を少し戻そう。

時は2000年代初め、産学官連携による様々な試みによって、燃料電池車の普及促進に向けて弾みをつけようとしていた。

トヨタは2019年6月4日、スイス・ローザンヌにて、IOC(国際オリンピック委員会)にもトヨタの燃料電池車「ミライ」を8台納車した。
トヨタは2019年6月4日、スイス・ローザンヌにて、IOC(国際オリンピック委員会)にもトヨタの燃料電池車「ミライ」を8台納車した。    トヨタ

その一環として、官公庁への車両貸出がおこなわれることになり、2002年12月12日、総理大臣官邸で燃料電池車納入式がおこなわれた。

小泉純一郎総理がトヨタの奥田碩会長とホンダの吉野浩行社長から燃料電池車の大きなカギの模型を受け取った。

その後、小泉総理はトヨタ「FCHV」とホンダ「FCX」それぞれの助手席に乗り、官邸内を走った。

また、福田康夫官房長官と扇千景国土交通大臣は自らハンドルを握って試走した。

こうした光景を、安倍晋三官房副長官が見守っていた。(肩書は当時)

筆者も日本やアメリカで、トヨタFCHVとホンダFCXに公道で試乗する機会が度々あった。両モデルとも、車体はズッシリと重たく、インバーターなど制御系機器からの発生音が少し耳に残る印象があった。

この時点で、リース販売が開始されたが、製品としてはまだまだ初期段階。これは、ダイムラー、フォード日産など他のメーカーでも同じだった。

そのため、メーカー各社は共同で研究開発を進める場がアメリカで始まった……。

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