【良いホットハッチをさらに良く】フォード・フィエスタSTエディションへ試乗 500台限定
公開 : 2020.12.23 10:25
限定生産の特別仕様となる、フィエスタSTエディション。新サスペンションに専用色のボディをまとい、ドライバーを誘惑します。もともと優れたホットハッチの走りをさらに高め、追加費用の価値はあると英国編集部は評価します。
ブルーのボディにブラックのホイールで武装
英国編集部お気に入りのホットハッチ、フォード・フィエスタSTに限定生産の特別仕様が登場した。フィエスタSTエディションという名前だが、英国には最速のフィエスタSTパフォーマンス・エディションも存在していたから、少しややこしい。
STパフォーマンス・エディションとこのSTエディションとを区別する、最もわかりやすい違いはボディの塗装色。パフォーマンスが鮮やかなオレンジ色に塗られていたのに対し、新しい方はフォードらしいソリッドのアズラ・ブルーで仕立てられる。
先代のフォード・フォーカスRSで塗られていた、ナイトロス・ブルーにも似ている。グロスブラックのバンパーとフローフォーミング製法による軽量な18インチホイール、大きなリアスポイラーで武装したフィエスタは実際、先代フォーカスRSの弟分のようにも見える。
STパフォーマンス・エディションとの見た目の違いは、この程度。ベースとなったのはフィエスタSTのトップグレードとなるST-3で、標準でふんだんな装備が付いてくる。クワイフ社製のLSDも。
そして注目すべきが、手動調整式のコイルオーバー・サスペンションを備えること。車高はフロント15mm、リア10mm低められ、佇まいが凛々しい。ステアリングホイール上でドライブモードを選択できることも、うれしい改良点だ。
エンジンは1.5L 3気筒ガソリンターボで変わりはない。200psと29.5kg-mのパワーとトルクは、6速MTを介して前輪へ伝えられる。
調整式サスペンションで素晴らしい走り
肝心の価格は、英国で2万7075ポンド(365万円)。ベースのフィエスタST-3が2万4575ポンド(331万円)だから、上昇率は小さくない。2019年に600台限定で追加されたSTパフォーマンス・エディションでさえ、2万6495ポンド(357万円)だった。
ただし、今回のSTエディションの製造台数は500台で、英国に入るのは300台のみ。若干のプレミア価格という面もあるだろう。
フィエスタSTエディションは、素晴らしい。新しい調整式サスペンションで、さらにイイ。収縮12段階、伸長16段階の設定があり、ショック上下にあるノブを回して切り替えられる。レスポンシブで機敏な性格はそのままに、狭い田舎道でも舌を巻くほど面白い。
ボンネットを開けばストラット上部のノブは回せるが、下側のノブを回すには、クルマをジャッキアップしてタイヤを外す必要がある。少々手間ではあるが、オーリンズ製ダンパーが組まれたポールスター・エンジニアード仕様のボルボよりは簡単だ。
今回の試乗車の設定は、とても妥当なものだった。かなり固めで、ボディの動きはかなり抑制されている。それでいて、フィエスタSTでは経験がないほど、しなやかな姿勢制御を叶えている。
通常のフィエスタSTの場合、舗装が荒れていると、ダイレクトに車内が揺さぶられることがある。でもこのSTエディションなら、揺れはだいぶ小さく収められ、快適にすら感じられるほど。
とはいえ、低速域での乗り心地が良いとはいえない。かなり積極的なホットハッチだから、不平をいうつもりはないけれど。