【西海岸のウッディワゴン】ビュイック・センチュリー、パッカード110、フォード・スーパーデラックス 前編
公開 : 2021.01.30 07:25 更新 : 2023.05.02 09:49
1930年代から1940年代に作られたウッディは、当時の北米を表現したかのようにゴージャス。今回は美しく貴重な3台をご紹介します。
西海岸のカーカルチャーに根付いたウッディ
サンフランシスコの北、メンドシーノの山岳地帯に広がる自然公園から、ロサンゼルスの南、ボルサチカ州立生態保護区の美しい浜辺まで、南北を結ぶカリフォルニア・ハイウェイ1号線(CA-1)。アメリカのアドベンチャー精神を象徴する沿岸道だ。
そんな西海岸のカーカルチャーに根付いたスタイルが、ウッディと呼ばれる渋いウッドボディ。必然的に誕生した木組みのワゴンは、カルト的な支持を集めるにまで至っている。今回はそんなウッディのステーションワゴン、3台をご紹介したい。
北米でも一二を争うほど上質なウッディを取材するなら、ニューポートビーチ以外、適切な場所はない。CA-1号線が始まるデイナポイントから30kmほど北上した、美しい宝石のような街だ。
西海岸に沿って伸びるCA-1号線は、全長1000kmほどある。その浜辺へ立ち寄れば、フォルクスワーゲンのキャンパーと同様に、ロングボードを屋根に乗せ、クーラーボックスを後ろに積んだウッディワゴンを目にすることができるはず。
いかにもカリフォルニアらしい光景だと思う。オシャレに見えるが、本来は1920年代から1930年代にかけて、実用目的で誕生したスタイルだった。
当時、鉄道駅から多くの人や荷物を乗せ、大規模な開発が進むエリアへ移動する手段に必要とされていたステーションワゴン。一般的なサルーンをベースに、コーチビルダーが手を加えることで生み出されていた。
実用主義のバンからシックなワゴンへ
ワゴンボディを作るのに、その頃の技術ではスチールを用いるとコストが高く付いた。だが木材なら安価に入手でき、職人の経験も豊富。窓ガラスのかわりにキャンバス製の窓を付けたような実用主義のバンが進化し、今ではすっかり憧れの対象となっている。
初期のウッディは、アッシュ材やポプラ材などが用いられていたが、技術の発達とともにスタイルも変化。開閉できる窓ガラスの登場で、構造に対応するためリアセクションはワイドになり、球根のようなカタチに展開していった。
ウッディは徐々に、実用目的のバンから、テニスコートやゴルフ場へ向かうシックなワゴンへと進化する。オーダーメイドとなるウッドボディの価格は高価だったが、成長過程の企業や中流家庭の間では、人気が高まっていった。
しばらくすると、自動車メーカーもウッディ人気にあやかり動き出す。ウッドボディを得意とするコーチビルダーへメーカーとして外注したり、フォードのように社内製造を開始した。
メーカーが動いたとしても製造コストは高いままで、ウッディの車両価格は下がらなかった。結果、生産台数が大きく伸びることもなかった。
加えて木材だから、定期的に適切なメンテナンスが求められる。放置すると、膨大な修復費用が発生する。ウッディ発祥の地、アメリカであっても希少な存在になっていることは、当然といえるだろう。