【日産ノート】ボディサイズ、あえて大きくならなかったワケは マーチが関係?

公開 : 2021.01.21 05:45  更新 : 2021.10.13 12:04

フルモデルチェンジした日産の看板モデル「ノート」が好評です。大きくならなかった新型ノートにはある違和感が……。今回のフルモデルチェンジでの狙いを考えます。

ノートが好評

text:Takahiro Kudo(工藤貴宏)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

昨年(2020年)末にフルモデルチェンジして3代目となった日産ノートの評判がいい。

ノートは2005年1月に初代がデビュー。ベーシックタイプのコンパクトカーのマーチに対して、実用性を高めたコンパクトハッチバックという位置づけだ。

日産ノート
日産ノート

2012年9月には2代目へと進化し、2016年11月にはeパワーを追加。2020年10月までの15年間で累計約146万台を売ったヒット作で、2019年には年間の販売台数で登録車の首位に輝くなど、日産を代表する車種だ。

今回のフルモデルチェンジはまさに「刷新」である。スタイリングは従来モデルのイメージをまったく感じさせない大胆な変化だし、インテリアも、たとえばフードのない全面液晶のメーターは液晶テレビやタブレット端末のような雰囲気。

スライド操作するシフトセレクターは見た目だけでなく操作感も新しく、細部まで随所わたって新しさが感じられるクルマへと生まれ変わった。

メカニズム的にも、新設計プラットフォームの採用や第2世代eパワーの初搭載などトピックが多い。eパワーとはハイブリッドシステムのひとつであるシリーズハイブリッドの日産独自の呼び名である。

シリーズハイブリッドはガソリンエンジンを発電専用とし、そこで起こした電気を使ってモーターを駆動する仕掛け。市街地での優れた燃費と電気自動車のようにスムーズかつシャープな加速フィーリングを実現しつつも、電気自動車とは違って充電は不要なのが魅力だ。

パッケージングの「違和感」

そんなノートだが、新型の実車に触れてなんだか違和感を覚えた。その理由はパッケージングだ。

初代ノートは、コンパクトカーのスタンダードであるマーチに対して後席と荷室が広いのが自慢だった。後席は足元がゆったり、荷室は前後長にゆとりがあって、マーチでは物足りないファミリーユーザーに向けた商品企画だったことは明らかだ。

日産ノート
日産ノート    日産

しかし、新型はそのあたりをあまり強調していない。荷室こそ先代比+10Lの340Lとわずかに広がっているが、とはいえライバルに対して自慢できるレベルかといえばそうとはいいがたい。

さらに興味深いのは後席空間で、なんと先代よりもわずかに狭い。先代が広すぎたからその反動なのかもしれないが、とはいえ今回のフルモデルチェンジは一般的な常識に反して“全長が短くなっている”のだから何らかの意図があっての結果出ることは間違いないだろう。

パッケージングにおいて、ノートならではの個性が薄まった気がするのだ。

そんなパッケージの変化をみて、「これは本来ならマーチのポジションではないのか」と感じるのは筆者だけだろうか。そう思う背景には、昨今のマーチを取り巻く環境の変化もある。

デビューが1982年と40年近い歴史を持つマーチは日産の顔ともいえるコンパクトカーで、これまで多くのユーザーに愛されていた。しかし、現在販売している4代目マーチ(K13型)は、新興国をメインターゲットとして、安く販売することを正義としてコスト低減最優先で開発。

そのため先進国の目の肥えた消費者には受け入れがたく、いま日本の個人ユーザーでマーチを選ぶ人はそう多くない。その結果が、日本におけるノート人気の理由の1つなのは間違いない。「マーチではなくノート」という判断をする人が多いのだ。

現行マーチはデビューから10年が経過しそろそろフルモデルチェンジを視野に入れてもいいタイミングではあるが、昨年の7月にマイナーチェンジを実施。しかも先進安全装備を搭載するなどメカニズムにかなり多く手が入っているので、しばらくはフルモデルチェンジしないと考えるのが妥当だろう。

記事に関わった人々

  • 工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。

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