【WRCとともに歩んだ進化】三菱ランサー・エボリューションVI TMEとX FQ440 MR 前編
公開 : 2021.02.13 07:05 更新 : 2022.11.01 08:57
欧州市場からの撤退を表明した三菱。残念なニュースですが、その輝きを確かめるならランエボが適役。歴史ともに、英国編集部が2台を振り返ります。
スバル対三菱を演じたインプとランエボ
21世紀が始まろうかという時期に存在感を示した、スバル・インプレッサWRXと三菱ランサー・エボリューション。筆者はなぜか、スバル・インプレッサほどランサー・エボリューションを好きにはなれなかった。
どちらも日本車ではある。ダークブルーのボディをドライブするコリン・マクレーが、英国出身だったからかもしれない。フィンランド出身の謎めいたトミ・マキネンに対し、ドラマチックなマクレーという構図があった。
そんな世界ラリー選手権、WRCでの戦いは、ソニーのビデオゲーム、プレイステーションにも波及した。ゲームをしたことのある読者も、スバル派と三菱派とで好みが分かれていたのではないだろうか。
ランサー・エボリューションは、ダイナミックでシャープな容姿をまとい、ソフトなスタイリングのインプレッサWRXより印象は強かったことは確かだ。そして、ランエボの方が優れていたとも思う。
インプレッサWRXとは異なり、1990年代の英国でランエボを買うのは簡単ではなかった。ランエボIからVにかけては、英国ウォリックシャーのディーラーか、ラリーチームを介して輸入してもらうのが唯一の手段だった。
正規輸入が始まったのは2000年から。今回のランエボVI トミ・マキネン・エディションも堂々と英国へ上陸した1台で、ディラーの価格表にもリスト入りしていた。歴代ランエボの中で、センターを飾るモデルといってもいい。
WRCを4連覇したトミ・マキネン
トミ・マキネンの伝説はご存知の読者も多いだろう。マキネンはランエボを駆り、4度もWRCで総合優勝を果たしタイトルを獲得。その偉業を称え、残すために誕生したのが、ランエボVI トミ・マキネン・エディションだ。
一方でランエボには、キャップを被ったやんちゃな青年が乗るような、ボーイズレーサーというイメージがそばにある。それは、アグレッシブなスタイリングを得た最後のランエボ、Xが登場するまで消えることはなかった。
ランサーには、初めから勝ち気なエボリューションがあったわけではない。1970年代、ラリードライバーのアンドリュー・コーワンなどがランサーをドライブし、ラリーで活躍。英国人にランサーという名を覚えさせるきっかけになっている。
当時の英国では、三菱ではなくコルトというブランドで販売されていた。三菱へ改められたのは、1987年になってからだ。
1973年に発売が始まった初代ランサーは、車両中央がくびれたコークボトル・ラインと呼ばれるアメリカンなスタイリングが与えられていた。ボディは4ドアサルーンと2ドアクーペが選べた。
高性能版のGSRが1973年の夏に追加され、後のランエボへとつながる、初めの一歩が踏み出される。1974年にアフリカのヒーロー、ジョキンダー・シンはランサーGSRをドライブし、サファリラリーで優勝。WRCでの活躍を予見させる走りだった。