【落札】完売マクラーレン「スピードテール」、オークションに 3.4億円の好結果も、手放しで喜べぬワケ

公開 : 2021.01.28 06:15  更新 : 2021.10.11 09:40

マクラーレン・スピードテールが、オークションに。発表前に完売した超希少車。3.4億円という落札額も、出品者は素直に喜べない事情が……。

マクラーレンの3座ハイパーGT

text:Kazuhide Ueno(上野和秀)
photo:Ted Seven aka Ted7/RM Sothebys

マクラーレンのラインナップで頂点に位置するのがアルティメット・シリーズ。

これまで、P1、P1 GTR、セナ、エルバが送り出されているが、シリーズ内で新たなカテゴリーとなるハイパーGTレンジに投入されたのが「スピードテール」である。

RMサザビーズのアリゾナ・オーションに出品された、2020年製のスピードテール(シリアルナンバー036)。
RMサザビーズのアリゾナ・オーションに出品された、2020年製のスピードテール(シリアルナンバー036)。    Ted Seven aka Ted7/RM Sothebys

ミドに積まれるV8 3994ccエンジンは、ツイン・ターボチャージャーで武装し757psを発揮。そこに電動モーターの313psが上乗せされ、マクラーレンのロードカー最大となる1070psの最高出力を叩き出す。

パフォーマンスは圧倒的で、最高速度はマクラーレンF1が記録した391km/hを上回る403km/hに達する。

生産台数はF1にちなんで限定106台とされ、価格は175万ポンド(約2億5000万円)とアナウンスされた。しかし公式発表前に完売となってしまった幻のモデルでもある。

RMサザビーズ・オークション

そんなスピードテールが、アメリカで開かれたRMサザビーズのアリゾナ・オーションに姿を現した。

新車として買えなかった購入希望者が一定数存在し、コンディションも“新車”といえることから大きな注目を集めた。

往年のマクラーレンF1にならい、セントラル・レイアウトの運転席を与えられた。
往年のマクラーレンF1にならい、セントラル・レイアウトの運転席を与えられた。    Ted Seven aka Ted7/RM Sothebys

シリアルナンバー036が与えられた2020年製のスピードテールは、走行30マイル(約48km)。2020年秋にマクラーレン・フィラデルフィアからファーストオーナーにデリバリーされたもの。

エクステリア・カラーはMSOに用意されるヘリテージ・アトランティック・ブルーにストライプを追加。

軽量アロイホイール、ブラックのキャリパー、ステルス・チタニウム仕上げのディフューザーなどで、オプション額は17万ドル(約1768万円)に及ぶ。

どう評価する? 注目の落札額

RMサザビーズにとって2021年の幕開けとなるアリゾナ・オーションは、新型コロナウイルス感染症の状況を鑑み、限られたビッダーのみが会場入りすることができた。

あわせて今やスタンダードとなったオンライン入札を併用して行われた。

3シーターとなるマクラーレン・スピードテールの内装。ドアは上方に開くディへドラル・タイプだ。
3シーターとなるマクラーレン・スピードテールの内装。ドアは上方に開くディへドラル・タイプだ。    Ted Seven aka Ted7/RM Sothebys

主催者によるスピードテールの予想落札額は、350~450万ドル(約3億6400~4億6800万円)。

オークションを終えてみれば最終的に327万7500ドル(約3億4086万円)で決着。新たなオーナーのガレージに収まることになった。

予想落札額には及ばなかったが、コロナ禍の不透明な経済状況を考えれば上出来の額といえよう。

ここでオークションのシビアな真の姿について説明しておこう。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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