【試作車を販売】ジェンセンC-V8コンバーチブル 雨漏りに剛性不足 奇抜な姿 前編
公開 : 2021.02.28 07:05
大胆にルーフが切り落とされた、ジェンセンC-V8コンバーチブル。1台のプロトタイプが作られただけの貴重なモデルを、英国編集部がご紹介します。
プロトタイプがそのまま売られた
1960年代、プロトタイプを一般に販売していたジェンセン。後の反省を招いてしまう。
今回取り上げる、ジェンセンC-V8コンバーチブルもそんな1台。厚さ10cmに及ぶ関係資料も、クルマと一緒に付いてくる。完成したのは1965年。充分な検査を受けることなく、最初のオーナーへ引き渡されたらしい。
オースチン製4.0Lエンジンを搭載した初代インターセプター・コンバーチブルが廃止されて以来の、4シーター・オープンだった。1954年にグラスファイバー製ボディの541を発表して以降、ジェンセンのカブリオレに対する熱意は薄くなっていた。
改めて、C-V8コンバーチブルは興味深い。C-V8クーペは、1962年にクライスラー製V8エンジンを獲得していた。世界で最も加速の鋭い4シーター・オープンとして主張するのに、充分な能力を備えていた。吊り目のヘッドライドは好みが分かれるとしても。
最高速度は209km/hがうたわれ、同時期のアストン マーティンやロールス・ロイスに並ぶ動力性能を保持。高性能な4シーターとして、カスタムオーダーのモデルへ視野を広げても、同等の内容を持つクルマは多くない。
アルビスですら、コンバーチブルで悪くないビジネスを展開していた。チューブラーフレームとプレス成形の組み合わせによる、強固なスチール製シャシーを備えるジェンセンC-V8。上級モデルとして、コンバーチブルを展開する余地は充分にあった。
奇抜なデザインのジェンセンC-V8
このコンバーチブル誕生前にも、新鮮な空気を吸いながらのドライブに共感する顧客が1人いた。しかし、実際に切り落とされたルーフは半分。クーペ・ドヴィルと呼ばれる、前席の上部分のみがオープンになったボディで制作されている。
クーペ・ドヴィルのC-V8にも、興味が惹かれる。しかし1930年代からジェンセンをイメージ付けてきたのは、フルオープンのコンバーチブル。ブランドらしいビジュアルとはいえないだろう。
クーペ・ドヴィルの前例を受け、ジェンセンを創業した兄弟、リチャード・ジェンセンとアラン・ジェンセンはコンバーチブルのC-V8を発案。デザイナーでエンジニアのエリック・ニールに設計を依頼する。
エリック・ニールは、奇抜なスタイリングのジェンセン541を生み出した人物。その経験が生かされたのかどうかはわからないが、賛否両論を招いたC-V8のボディも担った。
コンバーチブルのデザイン検討は、C-V8がMk-IIへ進化した1964年にスタート。ベースとしたのは、実験的なEXP/108型と呼ばれるシャシーだった。弧を描くルーフを切り落とした以上の内容が与えられていた。
ソフトトップを格納するため、ボディは230mmほど延長。リアシートの空間も犠牲になっていない。むしろクーペより若干広いほど。
フロントガラスやリアシートは、コンバーチブル用に設計。メラミン加工のダッシュボードは、太陽光の反射を軽減するためレザー張りが選ばれた。
オープントップ化の作業は簡単なものではなかった。1964年の年末には、作業は行き詰まってしまう。