【6速MTに911用キャリパー】ルノー5 ターボ2 25年の紆余曲折とレストア 前編
公開 : 2021.03.06 07:05
ブラッドリー家族が25年大切にしているルノー5 ターボ2。もう1家族の思いを込めた、完璧なレストアが施された1台をご紹介しましょう。
25年前に手に入れたルノー5 ターボ2
最近は、1.4Lターボエンジンを積んだハッチバックと聞いても、強く心が動かされることはないかもしれない。しかし、一昔前のフランス製ホットハッチなら少し印象も違ってくる。
今回ご紹介するのは、ルノー5 ターボ2。ただのターボ2ではない。機械的にどう優れているかとか、どれだけ大切にしているか、ということでは語り尽くせない。長い時を経た偶然の重なりで、いまここにある。
25年前、若きエンジニアのアレクサンドル・ブラッドリーは誇りと喜びに溢れた気持ちで自宅を目指していた。1984年製のターボ2と彼と、将来の妻、ヘレンとの、かけがえのない人生の始まりだった。
「ターボ2をずっと手に入れたいと考えていまいした。何年間も。ある日、工学の勉強の合間に目を通した雑誌に載っていたクルマへ、目が奪われたんです」。とアレクサンドルがきっかけを振り返る。
「2台載っていて、青い方は状態が良いものの高くて手が出せない。もう1台がこれでした。自分でコツコツ世話をしようと決めて、手に入れたんです」
「その頃はロンドン・スタンステッド空港で働いていて、自分でクルマを取りに行きました。メーター類が正常に動いていなくて、少し焦りましたね。カスタム塗装されていて、バンパーはボディ色に塗られていました」
「手に入れて正解だったと、すぐに実感しました。途中でガソリン補給に立ち寄ったら若者がやって来て、イイね、とサムズアップで挨拶してくれたんです」。羨ましがられるようなルノー・オーナーの始まりだった。
ホットハッチを乗り継いできた世代
「わたしたちは、ホットハッチを乗り継いできた世代です」。と話し出す、妻のヘレン。
「最初はミニ・クーパー。それからフォード・フィエスタ・スーパースポーツに乗り換えて、メトロ・ターボとプジョー205GTIも楽しみました」
「ある日、アレクサンドルがこのクルマで帰ってきたんです。いままでと違うな、と思いました。それ以来、毎日のように運転しています」。ターボ2への冷めない情熱が灯った瞬間だった。
今のターボ2は、夫妻のルノー・クリオ(ルーテシア)V6と、息子がたしなむロータス・エリーゼと一緒にガレージに並んでいる。母親がフランス人だったアレクサンドル。ルノーとのつながりは、幼い頃に始まった。
「親戚のいるフランスに帰る時は、いつもルノーR8ゴルディーニを探しながら車窓を眺めていました。1989年、父の新しいクルマを探しにロンドンのエッジウェアへ向かった時のことは、今でも忘れません」
「20台くらいのターボ2が、ずらっと。ボディカラーも色とりどり。ウィンブルドンのラドボーン・レーシングが輸入し、ベルストリート・ガレージが販売していたんです」
アレクサンドルが続ける。「自分でエンジンやトランスミッションのリビルドをしたり、これまでの作業は数え切れません。フロント・サスペンションも」