【コスト度外視のスポーツカーたち】内燃機関の火が消える前に 技術の粋を味わえる3台 前編
公開 : 2021.03.06 11:05 更新 : 2021.03.10 09:34
日産のフェラーリキラー、トヨタのホモロゲーションモデル、ルノーのアルピーヌの名を蘇らせたポルシェイーター。合理的な量販メーカーとしては奇跡的な3台が集合。まずは初上陸した英国で絶賛されているGT−Rニスモです。
奇跡の3台
今回集めたのは、奇跡的に生まれたクルマたちだ。財務担当が正気なら、開発コストと販売見込みを秤にかけるや否や、エンジニアたちにSUV開発へ移行するよう説得へ走るに違いない。だからこそ、このクルマたちが今ここにいることが、ますます喜ばしく思えてくる。
ましてや、2030年には内燃エンジンの新車販売が禁止され、そうでなくてもエミッション規制は厳しさを増し、メーカーの純益は落ち込みを見せているのだ。この手のクルマの余命が限られていると考えるのは、あながち的を外していないだろう。時流だけでなく、メーカーの目指す方向性にも逆らっているのだから。
GRヤリスを産み出したメーカー、トヨタを代表する銘柄といえば、もちろんカローラだ。将来の孫に、昔乗っていたと自慢したくなるようなことのないクルマが看板車種ということになる。
日産はといえば、収益の多くをクロスオーバーに頼っている。アルピーヌは今のところA110だけを生産するスポーツカーメーカーだが、MPVへの傾倒を強めているルノーの一部門だ。
そんな中で、今回のようなクルマたちを産み出したエンジニアたちには感謝するばかりだ。そして、それを売っているメーカーにも。
英国初上陸のGT-Rニスモ
まず取り上げるのは、3台の中で一番長い歴史を持つモデル、日産GT−Rニスモだ。
スカイラインから独立したR35型GT-Rは、改良を受けながらも2007年から販売され続けている。この間、ライバルたるポルシェ911が2度の世代交代を果たしていることを考えれば、驚異的な長寿モデルいえるだろう。
GT-Rを名乗るクルマは、いつの時代も特別な存在だった。その点は、R35でも変わらない。発売されたとき、それは世評を裏切る価格と速さを持つスーパーカーキラーとみなされた。
それから時を経て、価格は18万ポンド(約2520万円)まで跳ね上がった。最新のニスモ仕様のパフォーマンスを考慮しても、ちょっとばかり驚くような金額だ。それでも、その値付けを正当化するだけのものはあり、エンブレムが示す以上に魅惑的なクルマだと感じる。
これほど長い期間があっただけに、周辺部品の改良は繰り返されてきた。たとえばニスモ用のダンロップタイヤは、フロントの溝が2020年の年次改良で1本減らされている。これにより、接地面積は11%拡大したらしい。
ターボチャージャーにも手が入っている。新型ターボはGT3規定のレースマシン譲りで、ベーンは1基あたり1枚減って10枚となり、厚みが0.3mm薄くなっている。さらに、カーボンセラミックブレーキや新型ホイールを装着し、各部のカーボンパーツも増加。改良前より27kg軽量化された。