【生産終了話題】ホンダS660 常識覆す「贅沢車」 今買うべき理由は山ほど

公開 : 2021.03.15 05:45  更新 : 2021.10.13 12:04

ホンダS660の生産終了発表。専用設計で爽快な走りが魅力の贅沢なクルマは今買うべき。2度と出ないかも……。

軽自動車であって軽自動車にあらず

text:Takahiro Kudo(工藤貴宏)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

「軽自動車であって軽自動車にあらず」

ボクは、ホンダS660」についてそう思っている。

ホンダS660
ホンダS660

なぜなら、一般的な軽自動車とはまったく異なるベクトルで作られているからだ。

軽自動車を買うといえば、多くの人は室内の広さなどの実用性を考えて車種を絞り込んでいくだろう。

しかし、S660は狭いし、2人しか乗れず、荷物を積む場所だってほとんどない。実用性からアプローチすればいいところはまったく見当たらないクルマだ。

でもそれでいい。むしろ、それだからいい。

S660は実用車ではなくピュアスポーツカーだからだ。それを買うということは、軽自動車を買うということではない。スポーツカーを買うということなのだ。

そんなS660はいま、クルマ好きならば絶対に買いたいクルマである。世界中のクルマと比べても、S660しか持っていない魅力が詰まっているからだ。

S660は「本格スポーツカー」

まず、本格スポーツカーであること。

車体サイズこそ全長3395mm×全幅1475mmと小さいが、2シーターのミドシップというパッケージングはスポーツカーの直球である。

ホンダS660
ホンダS660

駆動方式は、もちろん後輪駆動だ。運転席におさまると着座位置は低く、運転姿勢から座って真っすぐ足を延ばした先にあるペダルレイアウトまで走りを楽しむことを最優先で車体が設計された、純粋なスポーツカーだということが伝わってくる。

小さくて軽いことをスポーツカーの美学と考えれば、新車で買える量産スポーツカーのなかでは世界最小の車体といえることが、S660の大きな価値だ。

ホンダ初の4輪車は軽トラックの「T360」だが、乗用車の歴史は2か月遅れて発売されたスポーツカーの「S500」から始まった。

S660というスポーツを意味する「S」に排気量の数字を加えた車名からもわかるよう、S660にはホンダのスポーツカーの血筋が、あつい想いとともにしっかりと受け継がれているのだ。

当然ながら、ミドシップレイアウトのシャシーは専用設計されたもの。

いま、プラットフォームは複数のクルマで共用化して開発費用を抑えるのが常識である。そんな常識に反し、量産車とはいえ、そう多くの販売が見込めるわけではないS660(6年間での販売台数は3万台ほど)に対して専用プラットフォームを与えるとはなんと贅沢なことだろうか。

マニュアルギアボックスは専用設計(その後Nシリーズにも展開している)。エンジンは1つ前の世代のNシリーズと共通だが、走りのために専用のターボチャージャーを組みあわせてレスポンスアップや高回転対応と同時に軽量化もおこなっている。加えて音にもこだわっている。

さらにいえば、インテリアではインパネなどはもちろん、一般的には他車と強要されがちなシート骨格やステアリングもS660だけの専用設計。

シートは軽自動車という「しばり」にとらわれない大きさで、ステアリングは直径350mmでホンダ車最小を誇る。

車体こそ小さいものの、シャシーからインテリアまで走りを楽しむ環境作りに対しての妥協は一切ないのだ。

そこには、とにもかくにも手間とコストがかかっている。なんという贅沢な作りなのだろうか。

記事に関わった人々

  • 工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。

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